カスハラの原因はおもてなし文化ではない/自己承認不足/ストレス解消法

本記事では、以下のような疑問を解決します。

  • カスハラの原因は、日本のおもてなし文化にあるのか?
  • カスハラによるストレスを根本的に解消するには?

記事を書いている私は、グローバル人材教育 コンサルタントです。

  • 20年以上のグローバル人材のマネジメント・採用・育成の経験
  • 航空機関格付け調査Skytraxにて日本で唯一5つ星★獲得のANAで品質調査便責任者の経験
  • 世界一のレストラン・デンマークnomaの海外初出店舗にてグローバル顧客対応教育実施(ミシュラン星★獲得/World Restaurant Award等受賞)

 

私のグローバル接客や教育の経験から、日本の接客現場で近年増加するカスハラの原因や、接客スタッフが抱えるストレスの原因を、「おもてなし文化のせい」と片付ける論調に少々疑問を感じています。

おもてなし文化を否定し、海外の接客文化の真似をし、カスハラとスタッフのストレスは解決するでしょうか。

日本が「特別なおもてなしの国」という訳ではない

カスハラの原因はおもてなし文化ではない/自己承認不足/ストレス解消法

 

まずはじめに、日本は特別なおもてなしの国なのか?という点です。

日本はおもてなし文化の国だと思われることが多いようですが、他国にも素晴らしいおもてなし文化は多く存在します。

「おもてなしをウリ」にしている日本の接客が是非見習いたくなるような、海外のおもてなしがあります。

日本が「日本はおもてなしの国です!」と自信をもっていることは素晴らしいことですが、それを聞いた外国人が抱きかねない違和感は少し想像できます。

 

おもてなし文化がカスハラを生むわけではない

カスハラとは、顧客などによる悪質なクレームや不当要求を、スタッフに突きつける行為で、日本で近年増え続けています。

日本のカスハラの原因がおもてなし文化にあるのであれば、海外でも、おもてなし文化がある国にはカスハラが多く存在していることになります。

海外の接客現場でも悪質なクレームを多々目にしますが、悪質なクレームを良く見かける国がおもてなしに特別富んだ接客文化と言うわけではありません。

 

おもてなし文化が「その人を通して」カスハラに変わる

接客文化に影響を受け、顧客側に「スタッフは顧客をもてなすものだ」という横柄な決めつけが生じた場合は、その横柄な心がカスハラを引き起こすのではないでしょうか。

接客文化➡カスハラ ではなく、

接客文化➡顧客の横柄な決めつけ➡カスハラ です。

 

おもてなし文化が「顧客をもてなすべきだ」「お客さまは神様だ」という意識を、顧客・スタッフ両者に生み出しやすいことは事実でしょう。

しかし、これを解消する方法は、おもてなし文化を否定することではなく、おもてなし文化を「へりくだりすぎる接客態度」や「顧客による横柄な態度」へ繋げているものを見つめ直すことではないでしょうか。

 

カスハラの原因が接客文化にあると考えるのは、急に動かなくなった車の故障原因が、「車の動きを止めたタイヤ」にあると考え、本当の原因であるエンジントラブルを疑っていないようなものです。

隠れた場所にあるエンジンを疑わず、目につく「止まったタイヤ」に原因を見出し終わっている状態です。

 

カスハラの本当の原因

つまり、カスハラの本当の原因は、「目の前で起こった出来事をハラスメント行為に変換する顧客の性質にある」ということです。

これは、パワハラの仕組みと全く同じで、顧客本人の内面的な問題が原因です。

内面的な問題とは、自己承認不足と、そこから生じる他者承認力の欠如です。

 

感情が乱れるとき

人の感情が乱れるとき、それは以下のような時でしょう。

  • 相手の行為や起った事象をありのまま受入れていないとき
  • 自分の思い通りに事が進まないとき
  • 自分の欲が満たされないとき(承認欲求/優位に立ちたい欲/自己証明欲など)

 

つまり、カスハラに限りませんが、ハラスメントを行う人の中に存在する他者受容力の欠如・焦り・不安・自分に対する評価の低さ・劣等感などの心の穴が、本人の感情を乱すということです。

 

思いつく原因から先を深掘りする

思いつく原因は、 劣等感、自信のなさ、不安、焦り、他者受容力の低さです。

これらが内面的なものだからといって、これが、原因分析で行き着くべき最後のエリアではありません。

その先があります。

  • なぜ劣等感があるのか?
  • なぜ自信がもてないのか?
  • なぜ不安や焦りが生じるのか?
  • なぜ他者受容力が低いのか?

 

内面的な問題は「自己承認不足」

内面的な問題は、本人の中で自分に対する自己承認ができていないことにあると考え、殆どの場合は間違いないでしょう。

「自己承認ができている」とは、自分をありのまま受入れ、認め、大切に思い、可能性を信じている状態です。

自己承認が未完了であれば、人は、自信がもてず、不安で、何かに常に焦っています

これは、心に穴が空いている状態です。

 

結果として、

  • 物事を自分の思い通りに進ませ安心したい
  • 人や状況をありのまま受入れられない
  • 忙しくしていなければ落ち着かない
  • 人の評価が気になる
  • 人からの評価が欲しい
  • 人から認められたい
  • 人から指摘されたくない
  • ミスや自分の課題を認められない
  • 目に見える成果を得て安心したがる
  • 自分の意思が分からない

などの状態になります。

 

それは、つまり、

  • 自己証明
  • 自己防衛
  • 自己実現

のために、意識と時間を費やし、心の穴を埋めることを優先し生きているということです。

当然ながら、自己承認不足の人は他者承認力にも欠けるため、自分の想定外の行動を取る人のことを受入れることができません。

 

これによって起こるハラスメントをぶつけられる相手はたまったものではありませんが、心の穴を埋めることは、生きるためには最優先される本能なので、パワハラをする本人にとっては当然のこととも言えます。

自己承認不足の人にとっては、心の穴を埋めて一旦自分を満たすことが、優先だということです。

 

パワハラ行為が心の穴を埋める

本能が求める通りに(顕在意識では無意識に)心の穴を埋めて一旦自分を満たすことが、一般的なパワハラ行為とどう関係があるのか?ということです。 

パワハラ行為に及ぶ理由(左)とその根底にある思い(右)

  • 自分が正しいことの証明のため ⬅自分が正しいこと・自分に価値があることを確かめたい
  • 相手に自分の正しさを分からせるため ⬅自分が正しいことを周囲に証明したい
  • 相手に相手自身の未熟さを分からせるため ⬅自分の思い通りに相手に変化してほしい
  • 自分の思い通りに相手を動かすため ⬅自分の思い通りに物事を動かしたい
  • うまくいかない原因を相手に見出すため ⬅自分に非があることから目を背けたい

 

つまり、

  • 自分の価値を保ちたい
  • 自分を傷つけたくない
  • 想定外・能力以上の状況に自分が陥らないよう守りたい

という本能が隠れています。

 

そして、それらの本能は、以下のように言い換えることができます。

  • 自分に価値を見出していない=自分に価値を感じられない

 ➡自己証明へ

  • 自分の課題を知り傷ついてしまっては自分を保てなくなる恐れがある

 ➡相手を必死に変えようとする&原因を自分以外に見出す

  • 想定外の事態に対処する充分な能力が備わっていないと自己評価している

 ➡思い通りに進めたい

以上が、自己承認不足がパワハラ行為へ繋がる背景です。

 

ですから、

パワハラをする人が自分の事を「自己承認できていないこと」が、パワハラの真の原因です。

パワハラについては、以下記事で解説しています↓

 

 

カスハラを生まない体質作り

カスハラの原因が顧客の内面的問題にあることが分かっても、対策の取りようがありません。

サービス提供側にできる対策としては、何があるのでしょうか。

 

「カスハラには毅然と対応」という規則が安心につながる

まず大前提として、「その場にいるスタッフが、度を超えたクレーム・悪質な要求と判断した場合は、堂々と毅然とした対応を取るものだという常識の中で働いていること」が、何より重要です。

悪質なクレームへの対応と、不快な思いをしたお客さまへの対応は、全く別物です。

「これは悪質だ」とスタッフが判断した時点で、丁寧な対応から、毅然とした対応へ即座に切り替えましょう。

 

当然必要なものが以下です。

  • 対応マニュアル
  • ハラスメントに向き合った現場スタッフの対応を尊重する組織創り

 

悪質なクレームへの対応は以下記事の中で解説しています。

 

スタッフが接客文化を作っていく意識をもつ

 また、なるべく多くの日本中の接客スタッフが、「接客文化は自分たちで作っていく」という意識をもつことが大切です。

これは何も気の遠くなるような話ではなく、当然実現可能なものです。

組織・業界・社会の風土を変えることはハードルが高いと感じられがちですが、そうでしょうか。

様々な接客現場で月1,000人以上のスタッフの価値感やビジョンに触れ、組織風土が支える接客品質の向上に向き合ってきた経験から言えば、接客を仕事とする方の心は純粋で、物事に誠実に取り組む特徴があります。

接客文化を創造・進化させることは充分可能だと思います

 

そのために、スタッフとその組織が以下について確認することが大切です。

  • 日本がこれから目指すべき接客文化のビジョン
  • 目指すべき接客文化を創り出す上で取るべき行動と控えるべき行動
  • 顧客・スタッフという関係性は人としての優劣とは無関係という、日本では影の薄い常識
  • 日本のおもてなし文化の背景
  • おもてなしの本質
  • おもてなし文化を横柄な態度に繋げる顧客の仕組み

 

受けたカスハラのストレスを解消する方法

カスハラの原因が顧客の内面的課題にあるとしても、解決を望むことはほぼ不可能ですし、「他者が内面的に成長するまで自分のストレスは消えない」こと自体がストレスです。

カスハラを受け、ストレスを感じない人はあまりいないでしょう。

しかし、ストレスを感じにくくすることは可能かもしれません。

カスハラを受けた際のストレスに対処する方法を確認しましょう。

 

2種類あるストレス解消法

まず踏まえるべきは、ストレスを解消する方法には2種類あるということです。

  1. 一時的にストレスを忘れる方法
  2. ストレスを感じにくくする体質を築く持続可能な方法

 

1番は、ストレスが現れる度に解消行為が必要になり、更に、それは単なる繰り返しではなく、心を徐々に疲弊の闇へ促すことに繋がる「根本原因の解決先延ばし」であることを踏まえた上で時限的に選択した方がよいでしょう。

人に話すことで心を軽くしたり、気晴らしをするなどは1番に当たり、心が復活するためには必要な場合もありますが、これらの行為自体にストレスを感じにくくする体質を築く効果はあまり期待できないでしょう。

 

理想としては2番なので、無理のない範囲で、自分の体質(考え方・捉え方)を変えていけると良いでしょう。

1番が必要な場合は、2番と平行して取り組めると良いでしょう。

 

カスハラをストレスに繋げない体質を作る

スタッフ自身の心が強く柔軟になり、カスハラをストレスに繋げない体質を築ければ理想です。

カスハラを受ける➡ストレスを受ける➡接客が辛い ではなく、

カスハラを受ける➡ストレスを受けそうになる➡が、ストレスの根源を自己成長へ繋げる➡成長し視野が広がる➡対応力・受容力が高まる➡接客は楽しい➡顧客が喜ぶ という流れです。

 

この流れに入り、ストレスを感じにくい体質でもあり、自己成長もしやすい体質になるためには、以下2つの方法をお薦めします。

  1. ハラスメントをする人の内面的な仕組みを知る
  2. スタッフ自身の自己承認力を高める

 

1.ハラスメントをする人の内面的な仕組みを知る

前述の「カスハラの本当の原因」で分かるように、ハラスメントをする人の内面的な課題がハラスメントを引き起こします。

このことを知っておくことは、ストレス軽減に有効です。

なぜなら、カスハラを以下のように捉えることが容易になるからです。

 

「顧客の激高=スタッフである自分の未熟さ」ではなく、

「顧客の激高=顧客本人の心の穴の大きさ」

 

カスハラという行きすぎた行為には、受入れではなく、毅然とした対応が必要です。

ただ、カスハラが生まれる背景を知っておくということです。

 

2. スタッフ自身の自己承認を高め

次に、スタッフ自身の自己承認を高めることがとても効果的です。

実は、カスハラを受けたスタッフの全員が大きなストレスを受けている訳ではありません。

接客のプロフェッショナル達を見ると、カスハラがストレスに繋がっていないどころか、持続的な自己成長へ繋がっていることが分かります。

これも、スタッフ本人の内面的な仕組みに理由があります。

 

カスハラがストレスにならない人

前述の通り、人の感情が乱れるとき(怒り・悲しみなど)は、以下のような時です。

  • 相手の行為や起った事象をありのまま受入れていないとき
  • 自分の思い通りに事が進まないとき
  • 自分の欲が満たされないとき(承認欲求/優位に立ちたい欲/自己証明欲など)

 

つまり、以下のような場合は、思い通りに事が進まないことや、反対意見や攻撃的な言葉を言ってくる存在は、何らマイナスにも見えないということです。

  1. 自分の存在価値を、自分が一番理解している場合自己承認の完了
  2. 相手の考えや存在を、ありのまま尊重し受入れている場合他者承認力
  3. 過去起った事象に抗わず、進化だけを見据えている場合ビジョンに徹する

 

「1.自分の価値を自分が一番理解」していれば、激高する顧客が自分の事を責め立て、たとえ人格否定したとしても、

  • この方は私のことを何も知らないので否定するのだろう

と捉えています。

 

「2.相手をありのまま尊重し受入れて」いれば、激高する顧客を前に、

  • この方は、この状況を激高へ繋げる方なのだな
  • そうせざるを得ない内面的な問題も何かしらあるのだろう

と捉えます。

 

「3.進化だけを見据えて」いれば、激高する顧客を前に、

  • 激高ぶりは一旦置いておいて、激高のキッカケとなるような問題点が自分たちにあったのではないか
  • 何か自分たちが見落としているものがあるのではないか

などと考えています。

 

自己承認が満たされているスタッフは、カスハラに対して対抗したり、自己証明・自己防衛の必要が湧いてきません。既に、自分の心を自分で満たし防御しているような状態だからです。

結果、シンプルに「自分たちに改善点があるとしたら何だろうか」と、進化を見据えています。

これが、カスハラをストレスではなく持続的な自己成長へ繋げている人の仕組みです。

 

 

自己承認力が高いスタッフによる副産物

実は、自己承認しているスタッフによる接客は、カスハラ自体を枯らす効果があります。

自己承認不足という内面的な問題を抱える顧客は、気に入らない状況に陥ったとしても、必ずしもカスハラ行為に及ぶ訳ではありません。

カスハラに及ぶ芽が大人しく消えゆくことが、時としてあります。

それが、自己承認力が高いスタッフによる対応を受けた時です。

 

なぜなら、

  • 顧客は自分の怒りに対して反撃の姿勢や過度な悲しみ・動揺も見られず、むしろ積極的な問題解決の姿勢が見られると怒る意欲が減退するのでしょう。
  • 攻撃するために怒りをぶつけているのに、そのスタッフが、攻撃を受けた打撃よりも、顧客が不快に感じた問題の原因解明・解決に必死になっている場合、怒りのぶつけ甲斐がないのでしょう。
  • 感情が入り見分け辛い顧客の言葉を正確に理解しようと耳を凝らし、問題を解決しようとするスタッフの姿勢は、顧客の中に引き下がるという選択肢を生み始めるのでしょう。

 

カスハラがエスカレートする時は、上記の逆の状況にある時です。たとえば、

  • スタッフが負けじと攻撃的な態度になる
  • スタッフが顧客が主張している問題から目を反らす
  • スタッフが顧客の話から逃げるような姿勢

 

ただし、しつこいようですが、行きすぎた行為には毅然とした対応が必要です。

また、身の危険や耐えられない辛さを感じたら、その場から去ることも大切です。

 

【まとめ】カスハラをストレスへ繋げないために

カスハラをする人の内面的な仕組みを理解する。

次に、スタッフ自身が、

  1. 自己承認を高める(自己承認)
  2. その結果、他者承認力を高める(他者承認力)
  3. ビジョン意識を高くもち仕事に臨む(ビジョンに徹する)

 

おもてなし文化はスタッフの負担なのか

さいごに、「おもてなし文化がスタッフに負担を強いているのではないか?」という意見もあるでしょうが、

相手を気遣うこと、慮ることは、接客スタッフにとって負担なのでしょうか?

これは、人によります。

 

相手を気遣い振る舞い、人に快適な時間を過ごしてもらうことに喜びを感じる人は、特に日本には確実に多く存在しています。

日本の航空会社などへの就職を強く希望するヨーロッパの方の多くは、自国にはない、日本のおもてなし文化に心を動かされて日本のサービス現場で働くことを選んでいます。

 

人を気遣い振る舞うことによって得られる喜びは、多くのプロフェッショナルを生んでいます。

おもてなし文化が接客スタッフを苦しめていることがあるとすれば、それは、人を気遣い振る舞う文化が原因ではなく、

  • 人を気遣うことに元々負担を感じるタイプなのに接客の仕事をしていること
  • 横柄な決めつけをもつ顧客の存在によって、もてなしの心が踏みにじられること

これらが原因かもしれません。

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