【グローバル人材㉜】協調性を養うための行動2【自己承認・他者承認力】
本記事では、以下のような疑問を解決します。
- 協調性を養う行動は、協調性ある行動を取ることなのか?
- 自然に協調性ある行動を取るためには何が必要なのか?
- 自己承認・他者承認力とは?身に付け方はあるのか?
Contents
【グローバル人材㉜】協調性を養うための行動2【自己承認・他者承認力】
協調性を養うための具体的行動として、前回のコラムで、「目の前のことに精一杯、真剣に向き合う」ということをご提案しました。
今回ご紹介する行動は、「相手をありのまま認める=他者承認力」です。
協調性と他者承認力の関係
まずお伝えすべきは、「協調性を養う方法」については、大切なことを見落としている教育が多いようだということです。
◆「協調性を養う行動」は「協調性ある行動を取ること」ではない
多くの場合、「協調性を養うための行動」と言えば、以下が挙がりがちです。
- 人と積極的にコミュニケーションを取る
- 自分の考えを相手に伝える
- 人の考えを聞く
しかし、これらの行動は、「協調性を養う行動」ではなく、「協調性ある行動」です。
◇「協調性ある行動」には、2パターンある
- 充分養われた協調性のもとで発揮される場合
- 無理やり発揮される場合
- 無理やり協調性ある行動を取っても、持続性はなく、協調性を養う効果は期待できないどころか、逆効果を生む場合もある
- 協調性ある行動を持続的に自然と取れるためには、協調性を養う以外にない
- 協調性を養うための行動は、人と積極的にコミュニケーションを取ることなどではない
◇単に協調性ある行動が取れれば良いのか?
協調性ある行動を取ること自体が目標であれば、協調性を養うことを省略しても間違っていません。
しかし、一過性のスキルとして協調性ある行動を身につけても通用しませんし、本人にとっては苦しいでしょう。
協調性を養うことを省略し、協調性ある行動を取ることだけで充分だと思うことは、たとえるなら、サッカーの基本も知らず、体力もついていないのに、選手と同じユニフォームを着て激しい試合に出ている状態です。
いずれ怪我をします。
◇協調性を養うために
- 協調性を養う行動は、協調性ある行動を取ることではない
- 養われつつある協調性を確かなものにする段階で、協調性ある行動を通した経験をする
- 協調性を養う方法は、意識面と行動面に分かれている
- 意識面については、協調性とは何か・必要性を理解すること➡「協調性とは/養い方10の意識ポイント」
- 行動面については、前回のコラム(協調性を養う行動①)と当コラムで紹介する行動を意識すること
以上のことを踏まえ、他者承認力について解説していきます。
人は認められないと心に穴が残る
皆さんは、このような経験はありませんか?
「私はこう思う!」と主張したら、相手に否定された。
「それ違うでしょ」「そんなことどうでもいい」「それおかしいでしょう」「なんでそうなるかなぁ」などと。
否定された人は、自分の中の自己承認が不充分の場合、以下のようになりがちです。
- もう傷つきたくないと相手を避ける
- 「自分が正しいことを証明してやる!」「あの人を見返してやる!」「認めさせてやる!」などと、自己証明に走る
- もう否定されないように自己防衛に走る
一方、自分の考えを受入れられ、
「分かる分かる!」「自分もそう思う」などと理解して貰ったり、
「へぇ!なるほど」「自分の考えとは違うけど、どういうことか詳しく教えて」などと興味を持たれたら、以下のようになります。
- 嬉しくなる
- 自分も相手を認めたくなる
- 相手の異なる考えを自分も聞いてみたいと思う
自分が認められていない(否定された)と感じ、且つ、自分で自分を認める自己承認が不充分の場合は、心に穴がある状態です。
その人にとっての最大の関心事は、「その穴を埋めること=自分を認めさせること・自己証明」になります。
これは、人が持つ5大欲求のひとつ「承認欲求」を満たすための本能と言っても良いでしょう。
一方の、認めて貰っている人は、心に穴はありません。
ですから、持っている力を、ただストレートに目的のために活かせるのです。
◆承認される・されないの差
◇認められる・受入れられる
➡ うれしい・自分も相手や他者を認めたい
➡ 自分の力を目的のために素直に使える
◇認められない・否定される
➡ 悔しい・傷つく
➡ 心に穴
➡ 自分の力を自己証明・自己防衛に使い、穴埋めを優先させる
自分の物差しで相手を計らない
異なる考えをもつ相手のことを、「異なる考えをもつ、尊重すべき相手」として、まずありのまま認めること(承認)が大切です。
- 普通こう考えるものなのに・・・
- なぜこの人は、そのように考えてしまうのだろう・・・
などという思いは、”自分の考えが基準”という視点で考えている証拠です。
色々な考えをもつ人がいるのです。自分の考えが正しいという思い込みは、危険かもしれません。
違いを受入れた上でコミュニケーション
相手の考えが自分とは異なることは素晴らしいことです。
様々な考え方が否定されず、尊重され、多様性を成果へ繋げようとする環境であれば、似たような考え方が集まった組織より、異なる考え方が多く集まった組織の方が、強くなります。
しかし、尊重するというのは、自分の考えを押し殺して、相手の考えに従い動くこととは別です。
異なる考えを紹介しあう、共有しあう、その上で、同じ目的ビジョンのもと、どの道を選ぶかを、皆で決めていくということです。
「承認力」は必須能力
たとえば、企業で管理職やマネージャーなどに昇進した人たちは、教育を受けます。
部下や後輩をうまく育てたり、力を発揮してもらうための関わり方や考え方を身につけるための教育です。
そこで、必ず学ぶのが「承認」です。
◆発展や成長に欠かせない「承認力」
- 上司や先輩に「人をありのまま受入れる承認の心」があるかどうか、どこまであるか、というのは、会社が発展するためにはとても重要なこと
- しかし現実は、管理職研修などで「承認の大切さ」を学んでも、実際は部下をありのまま承認していない人が多くいる
- 頭では承認の大切さを理解していても、いざ仕事が始まると、承認できない場合がある
- 承認が浸透していない組織では、問題が起こったり、風土が悪くなったり、成果が出せなくなる
- 問題が起こると、管理職は立ち止まり、対策を考え、部下を承認していない管理職は、部下の問題点を改善することに力を注ぐ
- 人をありのまま承認せず、その人の可能性を信じることもない管理職には、部下に問題があるという前提をもっている
- しかし、真の課題は、承認されていない人々の集まりが組織を創っていること。皆が、心の穴を埋めることを最優先し、働いている
自分のことを、欠点含めありのまま認め、受入れ、大切にしている人は、自分の可能性を信じています。(自己承認)
そして、自分に能力や魅力、可能性があるように、他人にも同様に素晴らしい能力や可能性があると分かっています。(他者を承認)
つまり、人をありのまま認められず、受入れられず、可能性を信じることができず、「あの人はもっと変わらなければだめだ」などと思っている人は、自分のことを認め、信じられていないのです。
◆承認力が身につく仕組み
- まず自己承認を完結(自分のことを欠点含めありのまま認め、受入れ、大切に扱い、可能性を信じている)
- 他者に対する存在承認(他者のことを欠点含めありのまま認め、受入れ、大切に扱い、可能性を信じている)
- 他者の存在以外を承認(努力・成果・意識など)
※2や3を身につけるには、1の自己承認を踏まえなければ、結局、承認力は一過性のスキルに終わります。
他者への承認力は自己承認から生まれる(上司AとBの比較)
承認が大切と分かっていても、他者をありのまま承認できない原因は、往々にして、自己承認が不完全だからです。
◆上司自身が自己承認をしていない場合Aと自己承認している場合Bの考え方の違い
上司AとBは、同じ後輩(彼)に対して、それぞれどのような考えを抱いているのでしょうか?
◇上司A (自分自身が自己承認していない人)
- やっぱり彼は何をやってもダメだ
- 彼は、なぜもっと○○しないのだろう
- いつになったら彼は成長するのだろう
- 彼が変わらなければチームはうまくいかない
※上司Aの特徴
- 後輩の不足点・課題にばかり目が行き、良い所を見ていない
- 後輩の中に眠っている可能性が見えていないので、もっと能力を身につけるべきなどという「穴を埋める発想」
- うまくいかないことの原因を自分以外の人や環境に見出す他責思考
- 今見えているモノが全てだと思っている
- 上司自身が自分のありのままを認めず可能性を信じていないから、後輩もどうせ何をやってもだめだと信じ切っている
⇒後輩の思い
- できていないことばかり指摘してくる
- やる気が失せるから、なるべく口をききたくない
- 上司自身は一体どれだけ出来る人なのか疑問
◇上司B (自己承認できている人=自分自身をありのまま認め、受入れ、可能性を信じている人)
- 彼は本当に○○が得意で安定しているし、△△は部署一の正確さだ
- ✖✖がまだ苦手のようだが、その他で充分カバーしているし、周囲もうまくフォローできている
- ○○の仕事をしている時の彼はとてもイキイキしている。この調子で大丈夫だ。彼はもっと伸びる
※上司Bの特徴
- 人の課題よりも、素晴らしい点に目が行っている
- 人に不得意なことがあっても、「現時点では不得意だが、」「まだ今は苦手だが、」と成長を前提に見ている
- 課題を片っ端から直そうとせず、本人の気づきに任せつつ、チーム単位で成長を見ている
- 上司自身が自分のありのままを認め可能性を信じているから、後輩の可能性も当然大きいと信じ切っている
⇒後輩の思い
- 上司Bは、自分の良い所や頑張りをいつも見てくれている(承認欲求が満たされていて心に穴がない)
- 自分でも気づいていなかった特技を、上司Bは気づいてくれている( 〃 )
- 自分の課題は自分が一番分かってる。✖✖のスキルを上げて、もっと良い仕事をしよう!(力を素直に目的のために使う)
- 自分はきっと、もっと凄い仕事ができるようになる気がする。頑張ろう!( 〃 )
- 同僚は皆、本当に優秀で良い人ばかりだ。○○さんが苦手なことは自分が率先してカバーしよう(自分がされたことを組織に循環させる)
この「彼」は同一人物です。
自己承認していない上司たちは、問題が起こったり、思い通りに部下が成長しない場合でも、「自分が部下たちを承認できていないことが原因ではないか?」とは、ピンと来ません。
なぜなら、「人を承認していない自分」に違和感を感じないからです。
自己承認・他者への承認を当たり前の習慣にする
人をありのまま承認しない自分に、なぜ違和感を感じないのかというと、承認が自分の中の当たり前・習慣になっていないからです。
「頭の中だけで、必要だと理解していること」に留まっているからです。
ですから、
◆承認を当たり前の習慣にする
若い内から、相手をありのまま受入れる承認を、自分の当たり前にすることが大切です。
- 歯を磨かずに外出したら、違和感を感じるように
- 準備体操をせずに試合をしたら、体が違和感を感じるように
相手のありのままを認めていない自分がいたら、自分に違和感を感じてください。
歯磨き、準備体操と同じように、承認を自分の習慣・当たり前にしてください。
そのためには、自己承認を完結させるしかないと思います。
自分の良さも欠点もありのまま認め、受入れ、自分を大切に扱い、可能性を信じることです。
それは、主体から始まります。(主体に向き合うことから始めましょう。)
自分や相手をありのまま認める「承認」が当たり前という人々によって、より良い未来は創られていくでしょう。
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