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「協調性を養う」教育完全手引き
協調性を養うための教育・育成に関わる方向けです。
本記事では、「協調性を養うための教育」において知っておいた方が良いと思うことを網羅しています。
本記事を書いているのは、グローバル人材教育のコンサルタント・講師です。
大きな誤解の解消から
まず始めに、最も重要なことを確認します。
「協調性を養う方法」は「協調性ある行動を取ること」ではありません。
協調性を養うための方法に対し誤解がある状態で、協調性ある行動を取ろうと意識すること&意識させることは、時に逆効果を生みます。まずは、この大きな誤解を解消することが大切です。以下記事で解説しています。
教育者が踏まえる大前提
次に、教育者(先生・講師)の立場にいる方が踏まえる前提を確認します。
- 教育者自身が協調性の必要性理解と協調性を養うための方法の理解が必要
- 多様性や協調性などを習得する前に主体性という土台が必要
1.教育者自身の協調性の必要性理解と養うための方法理解が必要
協調性の必要性と養う方法に未理解の場合、直接的に生徒や従業員に対して指導・育成することは難しいかもしれません。協調性を養う方法を、まずは教育者で試してみてはいかがでしょう。
教育者が協調性の必要性を深く理解していることと、高い協調性をもっていることが、協調性の教育に関わる最初の条件だと思われます。
2.主体性という土台が必須
文部科学省がESDで、教員・生徒が持続可能な社会実現のために必要と掲げる以下6つの視点に協調性の要素も当然含まれますが、それは「主体的な学び」から身につけると位置づけられています。
- 多様性(いろいろある)
- 相互性(関わりあっている)
- 有限性(限りがある)
- 公平性(一人一人大切に)
- 連携性(力合わせて)
- 責任制(責任を持って)
主体的な学びによって多様性など様々な要素を学ぶ、つまり、主体性は全てのベースであるということです。
「主体性・自己承認➡ビジョン➡多様性や協調性」という順番で教育を企画しましょう。
誤解と前提を確認したところで、以下、協調性の必要性理解と養い方についてです。
協調性の身に付け方
はじめに. 協調性の必要性理解
Step1. 自己理解
Step2. 自己承認
Step3. 協調性を養うための意識
はじめに. 協調性の必要性理解
協調性が大切な理由は、自分や周囲の人の能力が存分に発揮される環境に必要な要素だからです。そして、協調性によって築かれた環境の中で、多様な人々と良質なコミュニケーションを取り、相互理解とより良い価値創造へ繋げるためだと思います。
協調性は「身につけさせよう」とすれば逆効果
協調性を、いきなり誰かに身につけさせようとすれば、元々協調性に自信が無い人にとってはストレスです。
しかし、協調性がどのような意味をもち、自分や仲間の成果にどのように影響するのかを最初に理解すれば、協調性を身につけることに対して、人は前向きになりやすいです。
まずはじめに、以下を確認し、腹落ちすることが大切です。
- 協調性とは?協調性の働きとは?
- 協調性は、何のために必要なのか?
Step.1 自己理解
- 協調性や多様性をスムーズに養い本人の持続成長へ繋げるには、自己理解と自己承認が必要
- 自己理解と自己承認によって、主体的な学びが生まれ、協調性を養いやすくなる
- 学びや活動など全てのベースとなる主体性を生む自己理解と自己承認のための作業はシンプル
まず取り組む自己理解については、以下の2記事でまとめています。
Step.2 自己承認
自己理解をしても、自己承認が不足していれば、主体性は一向に高まりません。この自己承認のステップをスキップしてしまうことは、ガソリン・充電が空っぽの車に乗り込み出掛けようとするようなものです。その状態で車が走ることは、ありません。
自己承認のための作業に充分の時間を取ることは「自己理解を他者受容・価値創造へ繋げる」上では必須です。
まずは、協調性と自己承認がどのように影響し合っているのかを理解しましょう↓
次に、自己承認にじっくり取り組みます。
Step.3 協調性を養うための意識
自己理解と自己承認の次は、以下のような「協調性ある人の意識を参考に」し、自分なりに協調性ある行動を取ります。
- 人の気持ちを想像しながら発言、行動している
- 相手が考えを伝えやすいように振る舞うことができる
- 人に興味があり、人の話を聞くことが好きだ
- 自分は気分にムラがない方だと思う
- 向き合うと自分が決めたものには、常に自分の最大の力を出しているつもりだ
- 気に入らない人、気が合わない人は、特に思いつかない
- 自分と考え方が異なる人に対して、純粋に興味をもつ
- やる気のない人、態度の悪い人にも、何か理由があるのだと思う
- 自分の能力や考えが、何かの役に立てると嬉しいと思う
- 自分以外の人の能力や考えが活かされるといいなと思う
上記のような行動を取ることを促すというより、協調性ある人の意識を「紹介」します。これらを参考にしながら、本人が「協調性が必要な理由=自分や仲間が能力を発揮しやすい環境を作るために自分にできること」を考え行います。
本人が考えた「協調性ある行動」「皆が能力を発揮しやすい環境を作るための行動」であれば、全てが正解であり、共有され皆の参考にされるものです。
教育者からは、ひとつだけ提案します。「今に精一杯向き合う」ことです。
これによって得られた効果を共有する際は、「精一杯向き合ったことで自分にメリットがもたらされた」ではなく、「精一杯向き合ったことで、周囲の人に○○のようなメリットがもたらされた。それは結果として自分のメリットにも繋がっているのではありませんか?」というフィードバックが効果的だと思います。
教育者の役割
最後に、協調性を養うための教育で、教育者が気をつけることについてです。
教育者が踏まえる6つのポイント
- 協調性が何のために必要なのかを、教育者自身が誰よりも深く理解すること
- 教育者自身が、日頃から「チームが成果を出し易い環境創りを見据えて協調性ある行動」を取ること
- 「○○しなさい」という行動指示は基本的に不要。声掛けの必要がある場合は、理由付けをすること
- 協調性に欠ける行為によって生まれているマイナスに心を寄せて思いやる行動を、自分が取る
- 協調性は単なる特性であり、身長のように伸びるが、人によって伸びる時期はバラバラと理解する
- 今は協調性がない人でも、持っている可能性は大きいと理解する
本質を踏まえた関わりをもつ・声掛けをする
具体的に、いくつかの関わり・声掛けを確認します。
協調性を養おうとする上で逆効果な言葉掛け例
協調性を養おうとしている若者や後輩などに接するとき、周りの人が「協調性ある行動を取りなさい」などと言うことは、逆効果なので注意した方が良いでしょう。
- 「協調性ある行動を取りなさい」(なぜ協調性が必要なのか分かっていなければ、心は頑なになります)
- 「もっと周りと合わせて行動しなさい」(なぜ周りに合わせる必要があるのか?)
- 「協調性がなければこれからは難しいよ」(脅しを使って人が成長することはありません)
- 「ちゃんと○○さんの話を聞きなさい」(行動指示より、話し手を思った声掛けで「相手を思う風土創り」が効果的)
協調性ある言動を評価する際の声掛け例
- 「あなたの行動のお陰で、場が和みました(活気づいた/落ち着いた/冷静になった等)」
- 「皆がリラックスできる場のお陰で、各自が思っていることを充分アウトプットできました」
- 「皆が様々な意見を出せたお陰で、このような素晴らしい成果が生まれました」
- 「このような成果が生まれる背景には、そこにいる人たちの協調性ある行動が必ず隠れています」
- 「協調性ある行動など目には見えませんが、このように成果を出す上では欠かせません」
- 「だから協調性があることが大切なのですね。皆さんを見ていて改めて協調性がもつ力を感じました」
著しく協調性に欠ける人に対して
関わる若者の中には、著しくやる気・元気・協調性のない方もいるでしょう。どうにか変えよう、前向きにさせよう、などと悩むかもしれません。しかし、教育者であるあなたが相手を変えようと考え始めた瞬間から、相手は心を閉ざします。
一方で、あなたが相手に対し、本人さえ気づいていない秘めた能力と可能性に目を向け信じ始めた瞬間から、相手は自ら成長を始めます。これは、教育でも、人材のマネジメントでも、スポーツの世界でも、子育てでも言えることでしょう。
自分が教育者として「人に教える・人を変える・気づかせる立場」という考えを持っていたとしたら、その高い志と情熱は保持したまま、以下のように考えてみることが、あなた自身の教育の質をグンと高めるでしょう。
- 人は自分の能力や可能性を信じることで成長する
- 人が自分の能力や可能性を信じるためには、自分自身や周囲から良い所に目を向けられ信じ、認められることが必要(自己承認)
- 相手の能力や可能性に目を向け信じられる人は、自分自身の能力や可能性を信じている(他者承認力)
- 口先だけで「あなたの可能性を信じている」と言っても、相手にはすぐバレる
- その人のタイミングで前向きになったり、やる気が出る時が最もエンジンが力を発揮する
- 早くからエンジンを掛けた方が良い訳ではなく、人によってタイミングは異なる
- 自分を変えようとする人が見ているものは自分のマイナス面だから、そういう人と関わるのは苦痛
以下記事にて解説しています。
教育者の足並みが揃わない時
複数の教育者が関わる場合、当然、足並みが揃わないことがあります。ビジョンが共有されていない組織では特に顕著に表れるでしょう。
充分なビジョン共有がなされないのに、たとえば、責任者の言動が威圧的になり部下達を従わせようとすれば、目先の効果は生むでしょうが持続可能な発展をする組織になるかどうか分かりません。
責任者は、高いビジョンを抱き若者の将来のために動こうとしているのですが、折角の高い志が組織に分断を生んでしまっています。
責任者がビジョンを語り、共に歩んでいきたいという真剣な姿勢でいるにも関わらず、ついて来られない教育者がいるのならば、それは志の違いであり、同じビジョンを共有できない人かもしれません。
同じ役割を担うことは難しいので、役割を分け進むか、過去の功績に感謝し、別の道へ進めると良いと思いますが。
以下記事でビジョンで組織が変わる時の条件について解説しています。
また、若者にとっての理想の教育を考える人が周囲とぶつかる場合もありますが、それは、周囲の人に原因があるとは限りません。理想の教育を実現しようとする人の考えは間違っていませんが、見えていないものがあるかもしれません。
以下記事で解説しています。
認定講師になる
「主体性・ビジョン・多様性・協調性」という人財基盤を築くための教育を、ご自身が周囲の人に対して実施することができれば、教育・指導の質も、組織の生産性も高まるでしょう。
人財基盤教育を社会へ広げていくMBDGsプロジェクトの認定講師になることについて、検討してみてください。
1on1セッション
「手引きを参考にしてもうまく教育できない・関わり方が分からない」という方のための1on1セッションを始めました。