ビジョンで会社が変わる時の条件/企業の存在意義・パーパス

本記事では、以下のような疑問を解決します。

  • 会社ビジョンを設定する際の注意点
  • ビジョンで会社は本当に変わるのか?
  • 多国籍組織でのビジョンの必要性?

  

記事を書いている私は、

  • 企業・学校でビジョン教育をしている
  • 1ヶ月に1,000を越える個人・組織ビジョンに向き合うことも
  • グローバル組織創りは東京都支援教育として採用

  

ビジョンとは(=パーパス/会社の存在意義)

ビジョンで会社が変わる時の条件/企業の存在意義・パーパス

 

ビジョンは、「経営理念、パーパス、会社ビジョン、存在意義」などと掲げている会社が多いでしょう。事業を通して何を達成させたいのか?という「事業を営む目的=何のために会社は存在しているのか?」です。ここでは「ビジョン」と呼びます。会社などの組織だけが抱くものではなく、個人も抱きます。

 

ビジョン2つの種類

ビジョンに正解不正解はなく、人が「○○のために働いている」と思う、その内容は全てが尊重されるものです。それを踏まえた上で、ビジョン2つの種類を説明します。

 

◆ビジョンの種類

  1. 【自分のこと】自分ごとの目標を叶えることがイコール=ビジョン
  2. 【他人のこと】他者(誰か・社会・地球など)の幸せ達成がイコール=ビジョン

 

1.自分のこと

「①自分のこと」とは、個人や会社の目標をビジョンとして、意識の最上位に掲げていることです。

たとえば、

  • (自分が)出世する、評価される、有名になる、世界を飛び回り活躍する
  • (自分が)○○の役に立つ、○○のサポートをする
  • (自社が)○○に貢献する会社になる、業界一信頼される会社になる

などです。

 

この場合、その掲げた目標すら叶いにくくなります。なぜなら、「自分ファースト」主義者は持続可能な発展には不向きだからです。これらの目標は、ビジョンへ続く道の課程で気づけば叶っているものです。

 

2.他人のこと

「②他人のこと」とは、自分や身内の幸せを叶える目標は、一旦横に置いておいて、頭の中は寝ても覚めても「○○な人の幸せや笑顔」「より良い社会や地球」などの情景(=Vision)を思い、仕事をしている状態です。

儲けたい、有名になりたい、評価されたい、世界で活躍したい、人脈を広げたいなどは「自分のこと」の目標です。ふと思い出しモチベーションアップに繋がることがありますが、基本的に意識の大部分は、「誰かや社会のより良い状態」です。

 

自己犠牲ではない

自分を犠牲にするということではありません

  • 誰かが助かること
  • 誰かが笑顔になること
  • 地球環境が潤うこと
  • 社会から✖✖が消え、○○が広まること

などという理想を願い働いている人から、良質なお金や人脈が遠ざかり、評価が得られない方が難しいです。 

また、このようなビジョン実現を意識の最上位に位置づけ働いている人は、自分が思い描く自分ごとの理想の状態以上の、想像も及ばなかった状態に辿り着くものです。

たとえば、「世界を飛び回り活躍できれば嬉しい」と思っていたとしても、それ以上に自分にピッタリで能力を最も効率的に活かせる状態が向こうからやってくるようなものです。

 

一見すると貢献意識だが

多くのビジョンは、「自分のこと」の目標を掲げている段階かもしれません。

  • 会社ビジョンでも、「○○に貢献する会社になる」などと、一見すると他者貢献意識が含まれているようでも、視点は「自分が」「自社が」です
  • 自分が○○な貢献をしたい」「自分が役に立つんだ」という自分主語から先が見えてきません
  • 社会や人々の○○が叶っていること」が良質なビジョンです(主語は自分ではなく貢献対象です)
  • ビジョンが叶っていく過程で、「○○への貢献」も「自分が役に立つ」も、当然叶っています

 

視点を上げきれないままビジョンを設定すると、結局、自分の欲望を叶える目標がビジョンとなり、それは良質なビジョンとはまだ言い難いです。

お金のために働くと創造性が下がる

ちなみに、お金を稼ぐ、評価を得るなどということをモチベーションとするのは外発的な動機づけにあたりますが、それよりも、内発的動機づけによって活動した方が、人の創造性は高まるそうです。

 

 

他にも、ビジョンには「3つの視点」があります。以下記事で解説しています。

⇒「ビジョンの視点」記事はこちらから

 

ビジョン4段階の質

ビジョンには2つの種類・3つの視点の他、4段階の質があります。

◆ビジョンの質

  1. ビジョンを掲げる
  2. ビジョンをもつ
  3. ビジョンを深める
  4. ビジョンに徹する

 

4「徹する」が、ビジョンとして最も良質です。

数多くのビジネスパーソンや教育者のビジョンに接してきた経験から言えば、ほとんどのビジョンは1か2、または、ビジョンがない場外の0です。

 

1.掲げる

「段階1掲げる」は、ビジョンを掲げて終わっている状態です。

「自分の会社にビジョンがあるから、自分もビジョンがある」と思っているけれど、「ビジョンは?」と聞かれれば答えられない状態です。

 

2.もつ

「段階2もつ」は、自分の仕事がどのような理想に繋がっているのかを、一応知っている段階です。

「この仕事は○○の人の幸せに繋がっている」と思っているけれど、「具体的にどういうこと?」と聞かれれば答えられない状態です。自分の仕事と理想のビジョンとの間が、埋まっていない状態です。

 

3.深める

「段階3深める」は、自分の仕事と理想のビジョンとの間が、明確なイメージ(=情景・Vision)でしっかりと埋まっている状態です。

「この仕事によって、○○が生まれ、それによって誰々が幸せになっている」と、心から理解しています。ただし、どうしようもない現実が立ちはだかれば、ビジョンへ続く道から逸れ、妥協や諦めに慣れている場合があります。

 

4.徹する

「段階4徹する」は、以下のような状態です。

  • 常にビジョンからの逆算で動く
  • 言動がビジョンからブレない
  • 段階1~4の差が分かる唯一の状態

 

「現実は○○だから仕方ない」と言って本質から外れることを避けようと、理想を叶えられる現実から築こうとしている状態です。

このような人はなかなかいませんが、もし周りにいれば、彼らに今後の舵取りを任せた方が持続可能な成長は近づくと思います。

こちら↓「ビジョンに徹する・4段階のビジョン意識」記事をご覧ください。

 

ビジョンがある人・ない人

  • ビジョンはなくても生きていけますし、ビジョンがない人が間違っているわけではありません
  • また、同じ人でも、常に志高くビジョンを抱けるわけではなく、様々な事情によって抱けない時期も、人もいます
  • ビジョンを人に押しつけることは、本人の意欲や成長にとってマイナスしか生み出しません
  • ビジョンはその人のタイミングで、その人らしく抱くことが大切だということを人々が理解していることが大切です

 

その上で、ビジョンがある人・ない人が仕事でどのような差を生み出すのか、以下の記事をご覧ください。厳しい内容かもしれませんが、大袈裟でも作り話でもなく、私が目にしてきた現実を記しています。

 

ビジョンがある組織・ない組織

ビジョンがなくても、存在している会社は多くあります。日本の多くのビジネスパーソンは、ビジョンの重要性について説明を聞いてもピンと来ていないと感じる期間が長くあったと個人的には感じています。

ビジョンの重要性を感じない会社に、ビジョンを抱いてもらうことは不可能です。ですから、良質なビジョンのもとで持続発展する会社が増えることが、結果として効率的に多くの企業に良い影響を与えると思います。

◆良質なビジョンがある会社

  • 会社の存在意義と築いていく未来が、一言一句吟味された言葉で表現されるビジョンがある
  • 従業員の視点が、自分の仕事を通した顧客の笑顔と、その先にある社会貢献へ向いている
  • 「暗黙の了解」「阿吽の呼吸」「肌感覚で」「いつもの感じで」「普通に」「適当に」「なるべく」「早めに」「常識で考えると」「あとは気合いで」「今までみたいに」・・・という言葉に潜む危険を理解している
  • 「求められる人材像」ではビジョンを高く持ち、周囲と共有していることを重視し、行動は従業員に任せる
  • 明確な会社ビジョンから逆算した理想の組織創りを担える人材がリーダーに就いている
  • 時間を掛けて丁寧に、理想を通せる現実から築くことが当然の手順という常識で動いてきた従業員がいる

 

◆ビジョンがない会社

  • 社内に明確なビジョンが存在しない
  • 従業員の視点が、自分の仕事・部署・会社・上司から外へ向いていない
  • 明確なビジョンが無くても、今まで「従業員間に流れる暗黙の空気感」で団結し、会社が発展してきたことを誇りに思い、引き続き、「暗黙の空気感」で突っ走るつもりでいる
  • 「求められる人材像」の設定が細かい
  • リーダーを、「人を動かす力があるかどうか」だけで選ぶ
  • 会社の発展のためには、能力低い従業員が変わるか辞めるしかないと信じて疑わない従業員がいる
  • 「理想は分かるけど、現実はね・・・」と、現実をコントロール不可能な天気か何かだと思い込んでいる従業員が多くいる

 

持続成長・発展にビジョン意識は常識

ビジョンが持続可能な成長・発展を支えるということは、ビジネス・スポーツ・教育など様々な分野で常識になってきました。以下記事でご紹介しています。

 

見落としがちなポイント

ビジョンについて説明しましたが、ここで大切なことをお伝えします。

ビジョンがあれば会社が無条件に成長するわけではありません。

会社は多様な価値観をもった従業員の集合体です。

ビジョン自体が良質でも、それを活かすかどうかは、経営陣筆頭に、従業員次第ということです。

 

ビジョンが機能している会社

ビジョンが適切に機能し、組織が持続可能な成長サイクルにはまっている場合は、従業員や組織に以下のような特徴があります。

  • 従業員の主体性が確立している
  • 従業員自身の個人ビジョンの質が高い
  • 成果を生み出しやすい社内風土

 

ビジョンが機能しない会社

一方、改革が必要な会社は、ビジョンを設定しても、組織創りはすぐに頓挫します。なぜなら、ビジョンなく働くことに違和感を感じてこなかった経営陣・従業員の集合体がその組織を構成しているからです。

経営陣と従業員、ひとりひとりの主体性と個人のビジョンが高いとは言えないから、これまでビジョンなくして事業が成り立ってきたのかもしれません。

これには、相当なテコ入れが必要で、苦しみも、従業員の退職も、生まれるかもしれません。ビジョンによる改革は、志低い従業員や、利己主義な人を淘汰することになるからです。

しかし、会社が世の中のためになる事業を続ける上では、受入れるべき苦しみだと思います。

 

大切なのはトップの意識

また、「淘汰」という言葉を使いましたが、改革を試し、従業員へ説明をする際は、経営者の心がとても、とても重要になります。「ついて来れない人は辞めるしかない」という考えは、まさか抱くことのないように注意しましょう。

これまで共に会社を創ってきた全ての人に対して感謝し、できれば共に社会貢献の質を高めていきたい思いで、従業員へ説明します。そして、会社が良質なビジョンを掲げ、改革を決めた背景とその思いを、経営者がしっかりと語れなければ、改革は簡単に失敗します

 

ビジョンで会社が変わるときの2つの条件【結論】

会社が持続可能な発展をするためには、ビジョンを機能させる従業員の集合体が必要です。

その従業員に必要な要素は、まずは以下2つです。

◆ビジョンを機能させる従業員の集合体を創るために

  1. 経営陣・従業員の主体性の確立
  2. 経営陣・従業員自身のビジョン意識

ビジョンを機能させる従業員の集合体に繋がる

 

  • この2つを会社ビジョンと同時に整えることが、ビジョンが機能するための条件です
  • 経営陣と従業員の優先順位は、経営陣が先です
  • 会社ビジョンと経営者個人のビジョンは別です
  • 主体性の確立やビジョン意識をもつことは、全員にとって容易・可能ではありませんので、そのような方を受入れ認めながら、可能な方で前進させていくしかありません

「主体性を高める」教育完全手引き

⇒「主体性の確立教育方法」はこちらから

「ビジョン意識を高める」教育完全手引き

⇒「ビジョン意識を高める教育方法」はこちらから

 

多国籍組織の場合

多国籍組織では、

  • ビジョン設定と浸透
  • 日本人従業員の主体性の確立とビジョン意識

これらを、外国人スタッフを受入れる前に整えることが理想です。

理想通りにはいかないかもしれませんが、それでもできるだけ早く取り組んだ方が良いと思います。

持続可能な発展を可能にする組織創りに、グローバルもドメスティックも関係ありませんが、以下記事グローバル組織創りの理想的な取組みについて解説しています。

 

 

教育の順番「主体性とビジョン➡多様性・協調性」

組織が多国籍になる場合の従業員教育としては、多様性や協調性、コミュニケーションの教育を取り入れがちですが、それは、主体性とビジョンの後です。順番は、主体性とビジョン ➡ 多様性・チーム ➡ 協調性・コミュニケーションです。順番は重要です。

 

 

良質な異文化コミュニケーションは、自分軸と自分軸の交わりです。主体性の確立とビジョンを飛び越えて、Diversity教育を行っても、持続可能な発展に繋がるかどうかは微妙です。主体性とビジョンの教育に長時間を割くわけではないのですから、ここを疎かにする理由はありません。 

たとえるならば、真冬にコートを着て外出しても、足元がサンダルであれば、すぐに引き返しブーツに履き替えます。DiversityもCommunication、Managementも、主体性とビジョンを踏まえずでは活かしきれません。最初からブーツを履きましょう。

 

私の経験と考え

私は、グローバル教育を行っているコンサルタント・講師です。ビジョンの重要性については、日々の記事や、学校や企業研修の中で、何年間か繰り返し説明してきました。

今では、ビジョンを踏まえた教育は受入れられ、重要だと理解されるようになりましたが、教育を始めた当初は、ビジョンに対して「面倒くさい」と思われることが非常に多かったです。

たとえば、以下のような経験が思い出されます。

  • 「研修内容を決める上で会社ビジョンが必要なので教えて欲しい」と言えば、先方から「ビジョンとかなしで結構です」と言われました
  • ビジョンの重要性を理解している、ある企業の研修担当者から、「上司から、ビジョンに触れられると、研修を受けていない上層部との差が開くので止めて欲しいと言われました」と言われました
  • ビジョンがない企業の経営陣の方々から、「何十年と従業員は阿吽の呼吸で働いてきたので、ビジョンは必要ない」と言われました
  • ある企業で長期間に渡り数千人規模の研修をするに辺り、会社ビジョンを伺ったところ、最初は「ビジョンはいつか落ち着いたら決めます」と言われました
  • 他講師にコンテンツを提供し、登壇を依頼した際、最初は「ビジョンについては考えたこともないので、重要性が分からない」と言われました
  • ビジョンの内容に研修時間を割くことができず、受講者にせめて持ち帰り資料としてビジョンテキストを配布させていただきました
  • 某研修会社の登録講師をしていた頃、「お客さま(自治体)に地域のビジョンがあるか聞いて欲しい」と営業さんにお願いしたところ、「それを聞くと受注できないと思います」と言われました
  • 某研修会社の営業さんに、「ビジョンに触れずスキル付与だけの研修を行っても、受講者の自立に繋がらない」と言ったところ、「継続受注できるので、それでいいです」と言われました

 

ニーズに応えることも大切なので、どうにかビジョンを忍び込ませ、本質から外れた教育にならないよう対応してきました。しかし、あるクライアント様との出会いで気がつきました。

需要と供給が一致している同士が関わることが資源の有効活用であり、ビジョンがあるから成果が出るという共通認識で需要と供給が一致する場で頑張ったほうが、ビジョン=社会貢献に繋がりやすい、と。

ビジョンを取り入れることに後ろ向きな会社には、ビジョンに触れなくても研修効果が充分出せると思っている研修会社が関わった方が良かったのです。

 

 

「持続可能な発展の陰に良質なビジョンが隠れていた」このような会社や学校・個人が増えることが、私にとってはビジョンへ通じる仕事です。ビジョンに徹した訳で、それによって一旦ほとんどの仕事を手放しましたが、結果として得た物は大きかったと、今は思います。 

あなたの会社がビジョンに対して前向きなのであれば、ビジョンの質を深め、成果を出し、企業価値を高め、「秘訣は良質なビジョンです!」と大きな声で発表してください。それは大きな社会貢献に繋がります。

 

 

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