【グローバル人材⑨】ビジョン3つの視点【持続的に成果が出る人】
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【グローバル人材⑨】ビジョン3つの視点【持続的に成果が出る人】
前回のコラムでは、「ビジョンがある人・ない人の差」をご紹介しました。
両者の差は、厳しくも的確な分析であり、目を背けたくなったかもしれませんが、頷けるものでもあったと思います。
そのビジョンには、種類と質があります。
今回は、ビジョンの質、つまり「どの視点でビジョンを描いているのか」について解説します。
「旅人とレンガ職人」
イソップ童話の「旅人とレンガ職人」という話を知っていますか?読んでみてください。
◆旅人とレンガ職人
ある旅人が町を歩いていると、一人の男が道の脇で難しそうな顔をしながらレンガを積んでいました。
旅人は、その男のそばに立ち止まってたずねました。「ここでいったい何をしているのですか?」
すると、男はこう答えました。
「見ればわかるだろう。レンガ積みをしているのさ。毎日毎日、雨の日も強い風の日も、暑い日も寒い日も1日中レンガ積みだ。
なんでオレはこんなことをしなければならないのか、まったくついてない」
旅人は、その男に「大変ですね」となぐさめの言葉を残して歩き続けました。
しばらく行くと、一生懸命レンガを積んでいる別の男に出会いました。
しかし、その男は、先ほどの男ほどつらそうには見えませんでした。
そこで、また旅人はたずねました。
「ここでいったい何をしているのですか?」すると、男はこう答えました。
「オレはね、ここで大きな壁を作っているんだよ。これがオレの仕事でね」
旅人は「それは大変ですね」と、いたわりの言葉をかけました。
すると、意外な言葉が返ってきました。
「なんてことはないよ。この仕事でオレは家族を養ってるんだ。
この仕事があるから家族全員が食べていけるのだから、大変だなんて言ったらバチが当たるよ」
旅人は、その男に励ましの言葉を残して歩き続けました。
さらにもう少し歩くと、別の男がいきいきと楽しそうにレンガを積んでいました。
旅人は興味深くたずねました。
「ここでいったい何をしているのですか?」すると、男は目を輝かせてこう答えました。
「ああ、オレたちのことかい? オレたちは歴史に残る偉大な大聖堂をつくっているんだ」
旅人は「それは大変ですね」と、いたわりの言葉をかけました。すると男は、楽しそうにこう返してきました。
「とんでもない。ここで多くの人が祝福を受け、悲しみを払うんだよ!素晴らしいだろう!」
旅人は、その男にお礼の言葉を残して、元気いっぱいに歩き始めました。
引用:イソップ童話
3人のレンガ職人が登場しました。
それぞれの言葉について、あなたはどう感じましたか?
ビジョンの3つの視点
レンガ職人の言葉を元に、「どのような視点に意識があるか」を考えてみましょう。
人によって異なる三つの視点(レベル)が見えてきませんか?
その視点のレベルはそれぞれ、ビジョンレベル、目標レベル、作業レベルです。
「あなたの仕事はなんですか?」という質問をされた以下の職業の人々の答えを比較し、それぞれの人の「見ている視点」がどのように違うのかを思い出してみましょう。
◆レンガ職人の場合
「あなたの仕事は何ですか?」
- レンガを積むこと
- レンガで壁を作ること
- 多くの人が祝福を受け悲しみを癒やす大切な場所を作ること
◆サッカー選手の場合
「あなたの仕事は何ですか?」
- ボールを蹴ること
- チームが勝つために頑張ること
- チームが勝ち、自分達のサッカーを通して多くの子供に夢と希望を与えること
◆教師の場合
「あなたの仕事は何ですか?」
- 勉強を教えること
- 生徒が受験合格するよう勉強を教えること
- 生徒が将来、自分の能力や魅力を存分に活かして働くことが、多くの人の笑顔に繋がり、生徒の存在が幸せな社会作りに繋がっていること
同じ仕事をしていても、どのような意識で向き合っているかは人それぞれです。
- Aは、作業だけを見ている作業レベル
- Bは、作業が繋がっている目先の目標までを見据えている目標レベル
- Cは、作業によって目標が達成され、その先にある「誰かの、社会の、地球環境などの幸せ」を見据えているビジョンレベル
「ビジョンレベル」にまで視点を高める
ビジョンを設定するとき、つまり、「自分がどのようになりたいか」「何を達成したいか」「どのような人生を送りたいか」などという理想や目標イメージを決めるときは、是非「ビジョンレベル」にまで視点を高めて設定してください。
つまり、「自分がどうなりたいか・何を得たいか」という「自分の目標や欲求」から視点をグッと上げ、自分の存在や活動、仕事などが、「何に繋がっていくのか」「誰の幸せに繋がっていくのか」「何の役に立つのか」という他者貢献視点を意識の最上位に位置づけ、ビジョンを設定するということです!
「ビジョンレベル」の活動だから持続可能な発展に繋がる
なぜ、自分の願望や欲望を叶えることをビジョンの最上位意識とするより、他者や社会の幸せなどを意識の最上位に位置づけた方が良いのか?
それは、これからの時代、唯一、持続可能な発展を可能にする意識だからです。
ひとつの”頑張り”が、どれ程の人の幸せに繋がっているのか?
努力する本人の評価、幸せ、収入、名誉に繋がるより、多くの人々の幸せに繋がる頑張りの方が、広く受入れられ、大勢から臨まれ、愛されます。
自分が消費者だったら?と考えてみると簡単です。
自分が贅沢な生活をするために儲かることを一番大切に考え野菜を売っている人と、健康で幸せな食卓を囲む人々の笑顔を想像しながら野菜を作り売っている人から、自分は購入したいと思いませんか?
同じ値段の、同じような品質の1本のキュウリだって、私は後者の生産者から買いたいと思います。
そして大切なことは、それらのキュウリは決して”同じような品質”ではないということです。
その人の思いが行動を作ります。
金儲け願望が頭を占める人の農作業と、人々の笑顔を願う人から生まれる農作業が、同じ質であるはずがないのです。
高い意識から、良質な仕事が生まれます。
良質なものを、消費者は今後益々望みます。
結果、良質なものへ、評価・豊かさ・良質な人材が流れていきます。
だから、高い意識=他者や社会の幸せなどを願うビジョン意識を持つ人の仕事が、持続可能な発展に繋がるのです。
金儲けが間違いだと言っているのではありません。
金儲けのためであれ、仕事をするときは消費者の幸せを第一に考えていなければ、良質な仕事は生まれないということです。
- いかに儲けを増やすか?ということに意識を取られる分、消費者への貢献に100の意識を使えないから、生まれる品質を高め切れない、その結果として需要も高まらない、充分な利益が上がらない、だから余計に儲けを増やすことを第一に考え働く、だからまた、100の意識を消費者への貢献へ使えない・・・、という悪循環です。
- 稼ぐことも大切だけど、消費者や目の前の人への貢献しか頭にないから、「もっとこうすれば喜んでもらえるか」「どうすればもっと役立てるか」ばかり考え試行錯誤を繰り返す、だから品質はどんどん高まる、そして需要も高まる、役に立てている喜びは自信と誇りを生み、更にモチベーション高く貢献の道を探る、だからまた品質はどんどん高まる・・・、ふと顔を上げると「あぁこんなに稼げていた」「あぁこんなに評価されていた、いつの間に」というシンプルな循環です。
今、世界中のあらゆる分野で「持続可能な発展」を実現する流れが加速していますが、実現していく人間自体が持続可能な発展をする力があるかどうかが益々問われていきます。
国の豊かさを表わす指標がGDP(国内総生産)からGDW(国内総充実)へ変化する中、本当のWell-beingな社会は、Well-beingな人間によってしか創られないでしょう。
そのような中、幸福度世界56位(2021年)の日本は、これまで培った高い能力・技術を更に活かし世の中へ貢献するためにも、日本人は内面の豊かさを育てていく時期にあると言えます。
人々の笑顔を願い生きる人や、その人から生まれる仕事や商品が、世の中から評価されず、認められないことはないでしょう。
本人が特別願っていなくても、誠心誠意努力を重ねるその過程で、彼らは評価も幸せも、収入も名誉も手に入れているものです。
「ビジョンレベル」にまで視点を高められる人の役割
この、「ビジョンレベルにまで意識を上げる」ことは、長年社会で活躍しているビジネスパーソンたちにとって、難しいと感じることが多くあります。
どうしても「自分の欲望を達成することがビジョン」という考えから抜け出せないからです。
たとえば、懸命にビジョンの再設定に臨んだ、あるビジネスパーソンのビジョンは、「歴史に残る壮大なプロジェクトに自分が携わること」以上に、視点を高めることがなかなかできませんでした。
ビジョン意識を高めようとすると、元々の目標である「売り上げ目標を達成する」から、「歴史に残る壮大なプロジェクトに関わる」という、目標の規模が大きくなり、そこで止まってしまいました。
「自分がどうしたい」「自分がこうなりたい」という自分が主語の”自分の願望を叶える視点”から抜け出せず、他者や社会の幸せに思いをはせることが難しかったということです。
もしどうしても、”自分の願望や欲望を叶えること”から、”他者や社会などの幸せ”へ視点を上げられない場合は、無理をしなくて良いでしょう。
そのような人の仕事も、本人は自分の欲望を叶えるために働いていたとしても、実際はどこかでかならず社会の幸せに繋がっています。
その構図が見える人は、自分がビジョン意識を高く持ち、現実を生きることが身にしみこんでいる人です。
ビジョン意識で生きている人が、周りの人々の働きを、社会の幸せへと繋げれば良いでしょう。
役割が違うと言うことです。視野を高く維持できる人には、それなりの役目があるのです。
「ビジョンレベル」だけでは不充分
しかし、ビジョンレベルだけでは不充分です。
ビジョンから逆算した「目標レベル」と「作業レベル」における目標が必要です。
レンガ職人で言えば、ビジョンレベルで思い描く理想イメージがあり、それを実現するために「レンガで壁を作る」という目標が生まれます。
更に、レンガで壁を作るために、「レンガをしっかり隙間なく積み上げる」という作業レベルでの目標(行動目標)が決まるのです。
つまり、三つの視点はすべてが必要なのです。
ただし順番は、ビジョンレベルから設定することが大切なのです。
あなたのビジョンを設定する
さぁ、できる人は、あなた自身のビジョンを設定していってください。
- 自由な発想で、文字、絵、写真、音、動画などを使って、自分らしいビジョンを作ってみましょう。
- ビジョン=visionですから、ありありとした現実かのような映像・画像で理想の情景を思いましょう。
- ビジョン設定は、人によってスピードも、設定回数(改訂回数)も違います。
- 活躍する人であれば、生きている限りビジョン設定をし、自分の成長と共に、ビジョンも成長していくでしょう。
無理をせずあなたのペースで行うことが大切だということを覚えておいてください。
◆まとめ
- ビジョンには種類がある「作業レベル」「目標レベル」「ビジョンレベル」
- ビジョンレベルとは、自分主語の目標や願望を叶える視点ではなく、他者貢献意識から生まれる、誰かや何かが幸せになっている情景で理想を思い設定すること
- ただし、ビジョンレベルだけではなく、そこから逆算することで生まれる「目標レベル」と、目標から逆算して生まれる「作業レベル」での行動目標も必要。3つのレベルは全て必要だが、視点はビジョンレベルまで高めて設定する。
- 他者の幸せも願うビジョンレベルは、持続可能な発展に繋がる唯一の道
- ビジョンレベルへ視点を高められない人は、無理する必要はない。全ての人の仕事は誰かの幸せに繋がっているので、その構図が見えるビジョンレベルの人が、他者の働きを誰かの幸せに繋げればよい。
- ビジョンは、自由な発想で、文字、絵、写真、音、動画などを使って、自分らしく描く。ありありとした映像・画像を思う。成長と共にビジョンは改訂されていく。
- 人は誰でも、ビジョンを抱けない時はある。無理をしない。
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