【グローバル人材⑰】発表は「聞く人」が重要【人事の視点/採用面接】
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【グローバル人材⑰】発表は「聞く人」が重要【人事の視点/採用面接】
前回のコラムで、発表する際は、「伝える」より「伝わる」を意識することと、発表時のポイントなどをご紹介しました。
今回は、「聞く人」に焦点を当ててみましょう。
発表するとき&発表を聞くときに大切なこと
前回のコラムでも紹介した、発表の際の注意点をご紹介します。
発表する人 | 人の発表を聞く人 | |
姿勢 | 背筋を伸ばす/腕や手の位置/足はしっかりと | 発表者に誠意と敬意を払う姿勢 |
表情 | イキイキと楽しそうに(話す内容に合わせて) | 興味を持って聞いている表情 |
目 | 聞いてくれる人を順番に見て | 発表者の目を優しく見る/目線に注意する |
声 | 元気に(内容に合わせて) | 話の邪魔にならない程度の相づち |
体 | 話しながら手や体を動かしても良い | 興味を持って聞いている自然な体の動き |
気持ち | 聞いてくれる人への感謝/伝えたい思い熱く | 発表者への感謝/発表にMAX興味を持つ! |
頭 | 心は熱いが頭は冷静に/聞き手の理解度 | 発表者や人のため、自分の成長に繋がることとは |
発表は、発表する人だけではなく、発表を聞く人も、より良い発表の場を作るために気をつけることが大切だと思いませんか。
企業の人事部の厳しい視点
私は過去、企業で採用の仕事をしていたことがありますが、企業の人事部(従業員の採用や教育などを行う部署)で採用に関わる人たちは、人を見るプロです。
会社の事業は「物を作ること」でも、人事部の人は「人を見抜いて」お金を貰います。
膨大な人数を見てきた経験と知識や過去のデータを元に、目の前の人のほんの小さな言動から、その人の人となりを当て、将来性までを、瞬時に見抜きます。
その会社に合わない人財を誤って採用してしまうことは、会社に大きな損害を与えてしまうので、厳しいのです。
では、その人事部の人は、採用面接にやって来た就職活動生を短時間でより正確に見抜くために、何を注意深く見ていると思いますか?
もちろん全てを見ていますが、特にじっくり観察しているのは、「自分が発表していない時」のその人です。
人の発表を聞く態度
たとえば、集団面接のような場で、自分の発表が終わり、他の人が発表している時に、気が抜けている、態度が緩む、笑顔がなくなる、周囲に気を使えなくなる、他のことを考えている・・・
はい、不採用!です。
- 自分の時だけ頑張る人はムラがあると見なされるかもしれません
- 他者を思いやる気持ちに不足があると見なされるかもしれません
- 他者の能力を引き出す役割が期待しにくいと見なされるかもしれません
人として悪いということでは決してありませんし、人は成長していくものなので、今が全てではありません。
ただ、仕事で成果を出すまでに時間が掛かりやすい人、または、成果を出しにくい人だと判断されやすいのです。
◆人事担当者のリアルな視点
自分の発表の順番が回ってくるまでは、普通、多くの就職活動生にとっては緊張する時間でしょう。
にもかかわらず・・・、
- 自分とは関係のない、ライバルでもある他の学生の発表に真剣に耳を傾けうんうんと頷いたり
- たまたま目の前にいるその学生に人として興味を持って発表を聞いたり
- 緊張しているであろう発表者が話しやすいように時に笑顔を向け応援したり
このような振舞いをする学生は、経験豊富な人事担当者からは、次のように思われがちです。
- 自分だって緊張している中、自分の発表のことより、今の発表者に対して真剣に意識を向ける彼/彼女は、人に誠心誠意向き合う心の習慣が既に身についているのだろう
- 緊張で張り詰めたこの空間で、自分がすべきことを察知し自然と振る舞える彼/彼女がいれば、チームは成長しやすいだろう
- 人の発表を真剣に聞ける人が、大事な自分の仕事で手を抜くことは考えにくい
- 自分の評価を気にするのではなく、目の前のこと(今ならば人の話を聞くこと)に集中している彼/彼女は、ビジョン意識高く仕事をすることが、成果や評価に繋がっていると分かっているのだろう
そうして、発表者が話し終え着席する頃には、発表を聞いていた彼/彼女の面接試験合格が決まっています。
そして、既に合格が決まっている彼/彼女の発表が始まると、人事担当者はこのようなことを考えています。
- やはり間違いない、合格にして大丈夫だ
- (彼/彼女が話す様子を見て)社内では○○の仕事や、将来的には○○のポジションが合っているかもしれない
- (発表を上の空で聞いている他の学生を見て)この子の不合格は決まりだな
(もちろん、面接の時点での聞く姿勢は理想的ではなくても、その他の要素から成長の見込みが感じられれば合格になることはあります。)
あなたは今まで、人の発表を聞くとき、どのような態度でいたと思いますか?
その態度によって、発表している人は、話しやすくなっていたと思いますか?
周囲の人の関わり方
発表を聞く時の姿勢が大切だからと言って、若者に人の話をちゃんと聞かせようとして、以下のような声掛けをすることは控えた方が良いです。
◆やめた方が良い声掛け例
- 人の発表をちゃんと聞かなければ、評価されないよ
- 企業の面接担当者は、発表していない人の態度を見ているらしいよ
- 人の発表をちゃんと聞けない人は、仕事が出来ないと思われるよ
このような声掛けは、単なる脅しです。
若者が、「よし!人の話はしっかりと聞こう!」と前向きになることは、まずありません。
このような声掛けは、たとえるなら、
- 人に会うときは綺麗にした方が良いから香水をつけ、髪にワックスをつけましょう(お風呂に入るのではなく)
- 空腹を満たすためにずっとアメだけ食べていましょう(栄養を気にすることなく)
- 仕事に就くならとにかく毎日スーツを着ていればいいよ(スキルを身につけるのではなく)
うわべを整えれば問題は解決すると思い込んでいる、何も本質が見えていない声掛けと同じです。
◆若者にとって喜ばしいこと
若者にとって喜ばしいことは、このような働きかけに効果があると思っている周囲の人が、ご自分を見つめ直すことです。
- 「なぜ人の話をちゃんと聞くことが必要なのか?」ご自分の中で答えがあやふやだから、脅しのような声掛けは生まれます
- 「何のためにこれが必要なのか?」一つ一つのことに対して本質的な理由までを理解していないから、若者に対して、目先の行動変容を促し終える関わりが生まれます
若者の能力は、周りが思っているよりも高く、どのような人に囲まれていても、彼らはしっかり成長します。
本質を踏まえず自分と関わる人を見て、心の中で疑問やモヤモヤを抱きます。
そして、本質を見据え関わってくれる人がいれば、モヤモヤの対象が反面教師へと、しっかりと変わります。
若者にとって、本質を踏まえている人に囲まれていることは、喜ばしいことです。
「なぜ人の話をちゃんと聞いた方が良いのですか?」
- 評価されるためですか?
- 面接に合格するためですか?
- 良い人だと思われるためですか?
これらは、ちゃんと人の話を聞く心の習慣がある人たちが、「結果として手に入れているもの」です。
彼らは、自分が評価されるために人の話をしっかりと聞いているのではありません。
環境問わず活躍している人が、その段階に意識を留めていることは、ありません。
「なぜ人の話をちゃんと聞いた方が良いのですか?」
答えを見出してみてください。
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