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「ビジョン意識を高める」教育完全手引き
ビジョン意識を高めたい方と、教育・育成に関わる方向けです。
世界中で、教育・ビジネスなどあらゆる活動の本質を問う流れが加速する中で高まるビジョン意識の必要性ですが、本記事では、「ビジョン意識を高めるための教育」を行う上で知っておいた方がよいことを網羅しています。
本記事を書いているのは、グローバル人材教育のコンサルタント・講師です。
私共は、恐らく日本一幅広い層のビジョンに、最も多く関わらせて頂いていると思います。年齢は10代から80代まで、学生から企業人、経営者、芸能人、教育者、外国人、政治家、省庁関係者など幅広い層の、時に月1,000名以上のビジョンと向き合わせて頂いております。
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ビジョンとは
まず、ビジョンとは「叶えたい理想の状態の情景」です。目標とは異なります。目標が叶った先に実現している「理想の状態」の「情景=vision」です。
ビジョンは、個人としても、会社などの組織としても抱きます。会社では、「経営理念、パーパス、会社ビジョン、存在意義」などと掲げている場合が多いでしょう。事業を通して何を達成させたいのか?という「事業を営む目的=何のために会社は存在しているのか?」です。
ドリームハラスメント
夢やビジョンを持たないよりも、持って生きた方が、能力の発揮・有効活用にとっても、より良い社会作りにとっても、プラスに働くことは多いでしょう。
しかし、だからといって、他者にビジョンを持つことを期待・強制・誘導することは逆効果を生みます。大人による「夢を持つべき」という価値感を押しつけられることで「ドリームハラスメント」と感じ、逆に夢から遠ざかってしまう若者がいます。
決して人にも、自分にも、無理強いすることはできないのが、ビジョンです。
以下記事で解説しています。
ビジョンがある人・ない人の特徴の差
- ビジョンはなくても生きていけますし、ビジョンがない人が間違っているわけではありません
- また、同じ人でも、常に志高くビジョンを抱けるわけではなく、様々な事情によって抱けない時期も、人もいます
- ビジョンを人に押しつけることは、本人の意欲や成長にとってマイナスしか生み出しません
- ビジョンはその人のタイミングで、その人らしく抱くことが大切だと言うことを人々が理解していることが大切です
その上で、「ビジョンがある人」と「常態的にない人」が仕事でどのような差を生み出すのか、↓こちらの記事をご覧ください。
ビジョンがある会社・ない会社
ビジョンがなくても、存在している会社は多くあるかもしれません。しかし、安定的に持続成果を出してる会社にビジョンが存在しないということはなく、そのビジョンは「ただ、ある」ではなく「良質」です。
しかし、持続発展に欠かせないビジョンでも、目に見えるor計測できる成果ではないため、重要性が広く理解されているか分かりません。
ですから、良質なビジョンのもとで持続発展する会社が増えることが、結果として効率的に多くの企業に良い影響を与え、良い社会作りに繋がると個人的には思います。
◆良質なビジョンがある会社
- 会社の存在意義と築いていく未来が、一言一句吟味された言葉で表現されるビジョンがある
- 従業員の視点が、自分の仕事を通した顧客の笑顔と、その先にある社会貢献へ向いている
- 「暗黙の了解」「阿吽の呼吸」「肌感覚で」「いつもの感じで」「普通に」「適当に」「なるべく」「早めに」「常識で考えると」「あとは気合いで」「今までみたいに」・・・という言葉に潜む危険を理解している
- 「求められる人材像」ではビジョンを高く持ち、周囲と共有していることを重視し、行動は従業員に任せる
- 明確な会社ビジョンから逆算した理想の組織創りを担える人材がリーダーに就いている
- 時間を掛けて丁寧に、理想を通せる現実から築くことが当然の手順という常識で動いてきた従業員がいる
◆ビジョンがない会社
- 社内に明確なビジョンが存在しない
- 従業員の視点が、自分の仕事・部署・会社・上司から外へ向いていない
- 明確なビジョンが無くても、今まで「従業員間に流れる暗黙の空気感」で団結し、会社が発展してきたことを誇りに思い、引き続き、「暗黙の空気感」で突っ走るつもりでいる
- 「求められる人材像」の設定が細かい
- リーダーを、「人を動かす力があるかどうか」だけで選ぶ
- 会社の発展のためには、能力低い従業員が変わるか辞めるしかないと信じて疑わない従業員がいる
- 「理想は分かるけど、現実はね・・・」と、現実をコントロール不可能な天気か何かだと思い込んでいる従業員が多くいる
それでは、ビジョンの解説に入ります。
ビジョン2つの種類
ビジョンに正解不正解はなく、人が「○○のために働いている」と思う、その内容は全てが尊重されるものです。それを踏まえた上で、ビジョン2つの種類を説明します。
◆ビジョンの種類
- 【自分のこと】自分ごとの目標を叶えることがイコール=ビジョン
- 【他人のこと】他者(誰か・社会・地球など)の幸せ達成がイコール=ビジョン
1.自分のこと
「①自分のこと」とは、個人や会社の目標をビジョンとして、意識の最上位に掲げていることです。
たとえば、
- (自分が)出世する、評価される、有名になる、世界を飛び回り活躍する
- (自分が)○○の役に立つ、○○のサポートをする
- (自社が)○○に貢献する会社になる、業界一信頼される会社になる
などです。
この場合、その掲げた目標すら叶いにくくなります。なぜなら、「自分ファースト」主義者は持続可能な発展には不向きだからです。これらの目標は、ビジョンへ続く道の課程で気づけば叶っているものです。
2.他人のこと
「②他人のこと」とは、自分や身内の幸せを叶える目標は、一旦横に置いておいて、頭の中は寝ても覚めても「○○な人の幸せや笑顔」「より良い社会や地球」などの情景(=Vision)を思い、仕事をしたり、人生を送っている状態です。
儲けたい、有名になりたい、評価されたい、世界で活躍したい、人脈を広げたいなどの自分ごとの目標は、ふと思い出しモチベーションアップに繋がることがありますが、基本的に意識の大部分は、「誰かや社会のより良い状態」です。
自己犠牲ではない
自分を犠牲にするということではありません。
- 誰かが助かること
- 誰かが笑顔になること
- 地球環境が潤うこと
- 社会から✖✖が消え、○○が広まること
などという理想を願い働いている人から、良質なお金が遠ざかり、評価が得られず、良質な人脈が離れていく方が難しいです。
また、このようなビジョン実現を意識の最上位に位置づけ働いている人は、自分が思い描く自分ごとの理想の状態以上の、想像も及ばなかった状態に辿り着くものです。
たとえば、「世界を飛び回り活躍できれば嬉しい」と思っていたとしても、それ以上に自分にピッタリで能力を最も効率的に活かせる状態が向こうからやってくるようなものです。
一見すると貢献意識だが
多くの人のビジョンは、自分ごとの目標を掲げている段階かもしれません。
- 会社ビジョンでも、「○○に貢献する会社になる」などと、一見すると他者貢献意識が含まれているようでも、視点は「自分が」「自社が」です
- 「自分が○○な貢献をしたい」「自分が役に立つんだ」という自分主語から先が見えてきません
- 「社会や人々の○○が叶っていること」が良質なビジョンです(主語は自分ではなく貢献対象です)
- ビジョンが叶っていく過程で、「○○への貢献」も「自分が役に立つ」も、当然叶っています
視点を上げきれないままビジョンを設定すると、結局、自分の欲望を叶える目標がビジョンとなり、それは良質なビジョンとはまだ言い難いです。
お金のために働くと創造性が下がる
ちなみに、お金を稼ぐ、評価を得るなどということをモチベーションとするのは外発的な動機づけにあたりますが、それよりも、内発的動機づけによって活動した方が、人の創造性は高まるそうです。以下記事で解説しています。
ビジョン3つの視点
また、ビジョンには3つの視点があります。
◆ビジョンの視点
- 【ビジョン視点】理想が叶った人々や世の中の状態を思い描いている視点
- 【目標視点】 自分が携わっている仕事で達成したい目標・ゴールまでを見ている視点
- 【作業視点】 自分が行っている仕事の作業面だけを見ている視点
3つ全てが必要な視点ですが、3だけでも、2と3だけでも不充分であり、1のビジョン視点を持った上で2と3の視点を持つことが必要です。
以下記事で解説しています。
ビジョン4つの段階
ビジョンには2つの種類・3つの視点の他、4つの段階があります。
◆ビジョン4つの段階
- ビジョンを掲げる
- ビジョンをもつ
- ビジョンを深める
- ビジョンに徹する
4「徹する」が、ビジョンとして最も良質です。
数多くのビジネスパーソンや教育者のビジョンに接してきた経験から言えば、多くのビジョンは1か2かもしれません。または、ビジョンがない場外の0です。
1.掲げる
「段階1掲げる」は、ビジョンを掲げて終わっている状態です。
「自分の会社にビジョンがあるから、自分もビジョンがある」と思っているけれど、「ビジョンは?」と聞かれれば答えられない状態です。
2.もつ
「段階2もつ」は、自分の仕事がどのような理想に繋がっているのかを、一応知っている段階です。
「この仕事は○○の人の幸せに繋がっている」と思っているけれど、「具体的にどういうこと?」と聞かれれば答えられない状態です。自分の仕事と理想のビジョンとの間が、具体的な「達成した後の理想の情景/Vision」で埋まっていない状態です。
3.深める
「段階3深める」は、自分の仕事と理想のビジョンとの間が、明確なイメージ(=情景・Vision)でしっかりと埋まっている状態です。
「この仕事によって、○○が生まれ、それによって誰々が幸せになっている」と、心から理解しています。ただし、どうしようもない現実が立ちはだかれば、ビジョンへ続く道から逸れ、妥協や諦めに慣れている場合があります。
4.徹する
「段階4徹する」は、以下のような状態です。
- 常にビジョンからの逆算で動く
- 言動がビジョンからブレない
- 段階1~4の差が分かる唯一の状態
「現実は○○だから仕方ない」と言って本質から外れることを避けようと、理想を叶えられる現実から築こうとしている状態です。このような人が、もし周りにいれば、これからの時代は、彼らに今後の舵取りを任せた方が持続可能な成長は近づくと思います。
ビジョンを設定する
以上を踏まえ、自由な視点でビジョンを設定してみましょう。
ビジョンを叶える3つの考え方・意識
ビジョンを叶えるために大切な3つの意識を確認しましょう。
ビジョンを叶えていくために
ここまでを踏まえ、ビジョンを叶えていくための計画をしてみましょう。
ビジョンの共有と応援の場を作る
ビジョンを設定したり、様々な活動や学びを通して新たな思いや気づきを得た後は、仲間とのビジョン共有の場を作りましょう。以下のサイクルの環境作りをすることが大切です。
- 経験や思いを自己理解・自己承認へ繋げる
- ビジョンへの反映・ビジョンのバージョンアップ
- 最新ビジョンを周囲に共有
- 仲間のビジョンを知り、共感・応援
- 自分たちのようなビジョンがある人の集合体が時代を創っていくのだと確認
持続成長・発展にビジョン意識は常識
ビジョンが持続可能な成長・発展を支えるということは、ビジネス・スポーツ・教育など様々な分野で常識になってきました。以下記事をご覧ください。
組織のビジョン
ビジョンがあれば組織・チームが無条件に成長するわけではありません。たとえば、会社は多様な価値観をもった従業員の集合体です。ビジョン自体が良質でも、それを活かすかどうかは、経営陣筆頭に、従業員次第ということです。
ビジョンが機能するための条件については、以下記事で解説しています。
教育者が踏まえる大前提
最後に、ビジョン教育に関わる教育者(先生・講師)の立場にいる方が踏まえる前提を確認します。
- 教育者自身のビジョンが必須
- ビジョンの前に主体性・自己承認という土台が必須
1.教育者自身のビジョンが必須
良質なビジョンをもたない教育者は、若者のビジョン意識を高めるための教育において直接的に生徒や従業員に対して指導・育成することは難しいかもしれません。
関わる若者にビジョン意識を持って生活して欲しいと望む場合は、外部の教育情報(このコラムなど)を若者に取り入れようとするのではなく、まずは、ご自分に取り入れてください。
ビジョン意識を持って生きていない教育者は、ビジョンに関する若者への詳しいアドバイスは控え、まずはご自身がビジョン意識ある人生を歩んでいることが大切です。ビジョンをもち叶えていく方法を、まずは教育者で試してみてください。 教育者が良質なビジョンの必要性を理解し抱いていることが、ビジョン教育に関わる最初の条件です。
▶YouTube「時代を創る若者を育てる5つのポイント」はこちらから
2.多要素を習得する前に主体性という土台が必須
文部科学省がESDで、教員・生徒が持続可能な社会実現のために必要と掲げる以下6つの視点も、「主体的な学び」から身につけると位置づけられています。
- 多様性(いろいろある)
- 相互性(関わりあっている)
- 有限性(限りがある)
- 公平性(一人一人大切に)
- 連携性(力合わせて)
- 責任制(責任を持って)
主体的な学びによって様々な要素を身につける、つまり、主体性は全てのベースであるということです。また、「持続可能な社会の実現」が6つの視点を使う目的がビジョンです。つまり、 主体性の確立を可能な限り進めた上で、ビジョンや多様性などの教育です。
叶いやすいビジョンも、ビジョン意識も、全ては「主体性・自己承認」について理解した後の話です。
お薦め教育
全ての学びの基礎となる主体性を引き出しながらビジョン意識を高める教育に取り組むのであれば、弊所の教育をお勧めします。
このような教育手引きは無料で公開していますが、手引き通りの教育を実践するのは難しいこともあると思います。
以下は、実際に弊所の教育を受けられた学校の教員の方からの感想です。
「教員が主体性を引き出す正しい関わり方を理解していないということだったのですね」
「ビジョンについては、自分自身が考えたこともありませんでしたし、一般的なビジョンに対する認識では不充分だったと分かりました」
「この教育(ESDカリキュラム)を一番理解した方が良いのは上層部ですね」
生徒さんや従業員の主体性やビジョン意識を保つには、組織風土を見直すしかないということに行き着く組織もあります。組織風土の見直しは、関わる人への押しつけでは叶いません。教育と主旨の丁寧な説明と、前向きな関わりが必要です。
ESDのカリキュラム化教育は、こちらから↓
認定講師になる
「主体性・ビジョン・多様性・協調性」という人財基盤を築くための教育を、ご自身が周囲の人に対して実施することができれば、教育・指導の質も、組織の生産性も高まるでしょう。
人財基盤教育を社会へ広げていくMBDGsプロジェクトの認定講師になることについて、検討してみてください。
1on1セッション
「手引きを参考にしてもうまく教育できない・関わり方が分からない」という方のための1on1セッションを始めました。
教育を踏まえた関わり方を学ぶための1on1セッションはこちらから