【外国人客クレーム】英語の使い方/中国人/スタッフハラスメントに注意

この記事のトラブル・クレームは感情的なお客さまのクレームを前提としています。

悪質クレームが疑われる場合は、こちらの記事へ飛んで下さい ➡悪質クレーム判断基準と対応

【外国人客クレーム】英語の使い方/中国人/スタッフハラスメントに注意

【外国人客クレーム】英語の使い方/中国人/スタッフハラスメントに注意

 

外国人のお客さまは、日本にとって、大切なお客さまです。

しかしながら、お客さま対応現場で働く日本人スタッフの中には、特にトラブル発生時の対応に、難しさを感じている人は多いようです。

 

以前は、中国人のお客さまのクレームにどのように対応するかという、対応例や姿勢についてお伝えしました。(外国人クレーム対応「中国人のクレーム対応」無理な要求)

 

今回は、中国人のお客さまのトラブルやクレームを、どのような意識を持ち、どのように英語で解決するのかについてお伝えします。

 

訪日外国人トップは中国人と韓国人

訪日外国人の中で一番人数が多いのは、中国人と韓国人です。(2017年10月時点)

先月の訪日数、中国人は678,300人、韓国人は556,900人で、昨年同月より、両国とも約30%も伸びています。

当然、日本国内のお店を訪れる中国人や韓国人も多いので、接客現場に中国人や韓国人スタッフを雇ったり、または、日本人スタッフが中国語などを学ぶ会社も多いでしょう。

 

これは、もちろん良いことなのですが、そのような会社が注意すべきことがあります。

今からお伝えすることを意識して行っている現場では、中国人のお客さまに対する苦手意識を持つスタッフが産まれないどころか、中国人のお客さまに対して良質な対応を取るスタッフが増えます。

 

トラブル対応は敢えて英語で

中国語がネイティブレベルに扱えるのであれば、トラブル時も中国語で行えば良いですが、そうでない場合は、片言の中国語でトラブル対応をするのではなく、敢えて英語を使ってください。

中国語は「売上げを伸ばすため」に使いましょう。

 

トラブル対応は可能な限り英語で行う

英語が全くできないのであれば、日本語や中国語で対応するしかありません。

しかしながら、難しい英語は必要ありませんので、敢えて英語で対応してみてください。

なぜ日本語より英語での対応が、トラブル対応に効果的なのでしょうか。

 

お客さまが諦めて帰っていく

まず、日本語が理解できない中国人のお客さまは、諦めて帰ってしまうかもしれないからです。

この状態はできれば避けたいです。

目の前の中国人のお客さまが二度とリピートしないだけではなく、様々なマイナスの原因になります。

中国人のお客さまが諦めて帰ってしまうことは、何が良くないのでしょうか?

 

たとえば、

  • そのお客さまは二度とリピートしません。(再訪日外国人観光客はどんどん増えますよ)
  • そのお客さまは悪い口コミを流すかもしれません。(中国人の口コミ文化を敵に回すのですか?)
  • トラブルの本質を見極めず解決しないスタッフの姿勢は、あなたの会社にとって不利益です。(クレームやトラブルは会社の財産だと考え、感謝してお客さまのトラブル対応を続けている会社もあるのです)
  • 折角あなたのお店(サービス)を選んでくださったお客さまが不愉快な思いをしたまま帰らせてしまうのは、誠実にお客さまに向き合う会社のスタッフが取るべき行動ではありません。この行動の積み重ね、影響は膨大です。お客さまに選ばれるお店(サービス)には決してなれません。日本人のお客さまからも見放されます。

ですから、最低限コミュニケーションが取れる英語を使ってください。

 

中国語での対応も避ける

では、中国語で対応するのはどうでしょうか。

トラブルに真摯に対応するのであれば、もちろん、片言の中国語で対応しても構いません。

ただし、注意することがあります。

 

日本人スタッフが中国語で対応した場合、

  • トラブルによって感情的になっている中国人の主張はエスカレートするかもしれません(自分達を大切な顧客だと考えているから中国語を学んでいるのだろう!なぜ自分達の要求を受け入れないのだ!となっては困ります)
  • 日本人スタッフが中国語が話せるのだと思い、お客さまが複雑な中国語を使った場合、十分に対処できなくなり、結果お客さまにご迷惑を掛けてしまう

ですから、お互いが片言ではあるけれど、「英語」を使います。

 

敢えて「英語」を使うメリット

では、中国人のお客さまのトラブル時、敢えて英語でトラブル対応をする理由を3つ挙げます。

 

①冷静な状況を作り出すため

「外国」感を出す

「ここは日本という外国であり、異なるルールや法律がある(ここは中国ではない)」ということを、「中国人にとって外国語である英語」を使うことで演出します。

これによって、中国人のお客さま自身が冷静になることと、中国の文化が全てではないことを理解することを促します。

日本だけのルールではない」感を出す

日本語で対応すれば、「そんなルールは日本でしか通用しない」と思われやすいですが、英語で対応すれば、こちらが言わずとも「これは世界でも共通するルールなのか?」と、お客さまの方が考え易くなります。

「お客さまが感じるアウェイ感」を排除する

また、お互いにとって母国語ではない英語を使うことで、お互いの立場の有利不利・主従関係・ホームとアウェイ感を取っ払い、話の内容に意識を向けやすくします。

こちらの説明を理解して頂くために、自分たちに威厳を感じさせることでお客さまを従わせるという発想もあるでしょう。日本語を使い敢えてホーム感を演出したり、責任者を出すなどして、お客さまの立場を不利に見せる方法です。

このやり方は、悪質なクレーム時には使えますが、お客さまとの主張が噛み合わない等という通常のクレーム時には有効ではありません。力で従わせるスタッフハラスメントになる可能性があり、持続発展する人材や組織が決して選ぶことのない方法です。

 

ちなみに、英語が母国語のお客さまに対しては、英語で対応しながら、重要部分は敢えて日本語でゆっくりと低めの声で伝えるのも効果的です。

 

②自分の頭を整理し冷静に

対応している日本人スタッフにとってもメリットがあります。

分かりやすく明瞭、簡潔な英語を使って、お客さまに物事を説明することによって、日本人スタッフ自身が頭の中を論理的に整理することができます。

 

③証人の確保

分かりやすく、明瞭な英語で、ハッキリと話すことで、周囲の人にも聞こえ、どのようなやり取りをしているのか分かってもらえます。

 

中国人トラブルを最小限に留めた機内の例

以前、私がCAをしていたとき、中国便の機内にて、中国のお客さまによる問題行為によってトラブルが発生し、機内に居合わせたお客さまも介入し、着陸後警察に、そのお客さまを引き渡すという事態が発生しました。

 

原因はある男性中国人旅客の迷惑行為でした。

彼がその行為を取らなければならなかった理由も、単なる彼のワガママであり、本人もワガママを主張していることは理解していました。

 

CAに求められたこと

CAに求められたことは、

  • そのお客さまに迷惑行為を止めてもらうこと
  • 機内の安全を確保すること
  • そのために割く時間を最小限に留めること です。

 

実際にそのフライトのCAが取った対応策を簡単に言いますと、迷惑行為を続ける中国人のお客さまが抵抗することなくCAの指示に従うようにした、ということです。

 

そのためには、CAには以下のものが必要になります。

 

  • 毅然とした態度
  • お客さまを説得する力
  • お客さまが「抵抗しても無駄だ。自分が間違っていたのか。」と理解できる対応

そして更には、

  • 「この人たち(他のお客さま)に悪いことをしたみたいだ…」と再発防止に繋がる対応
  • 無駄なく振る舞いこれらのことを最小限の時間で終えること 

 

敢えて通訳を使わない

この時、機内には中国人CAが乗務していました。

通常ならば、中国人のお客さまには、中国人CAが対応するか、チーフパーサーの通訳として中国人CAが活躍します。

 

ただし、このような緊急事態では、日本人チーフパーサーは、敢えて中国人CAをその場に居合わせません。

 

日本人スタッフの責任者であるチーフパーサーは、日本語が出来ないその中国人旅客と、簡潔明瞭な英語だけを用いてコミュニケーションを取ります。

 

英語だけでコミュニケーションを取ることは、中国人のお客さまの無理な要求を抑えることもできます。

 

意識して活用するもの

コミュニケーションを取る際は、あらゆる方法を使います。たとえば、

  • 身振り手振り
  • 迷惑行為を客観的に説明できるツール(法律が書かれた説明書など)
  • ゆっくりとした低い声
  • 相手の目をしっかりと見る
  • 威厳を持ちながら、誠意を持って対応

 

責めない

また、その行為のために、どれだけの人に、どれほどの迷惑が及ぶのか、ということも、責めるのではなく、理解してもらえるよう伝えます。

もちろん、こちらの芯は曲げません。威厳を保つことで多くのものを守れるということを忘れません。

しかし、100%相手が悪いと思われる場合でも、目線は相手に合わせ、理解しやすいようにコミュニケーションを取ります。

 

誰でも感情的になったり、勘違いをしたり、自己中心的に物事を考えることはあります。

私たちも海外のルールを全て理解しているわけではありません。皆が発展途上です。

今回のやり取りを機に、お客さまは日本のルールを理解したり、外国人との摩擦を乗り越える方法を習得するかもしれません。

 

結果、このフライトは、遅延することも、機内のお客さまの時間を拘束することもなく、着陸空港を変更することもなく、一人の男性旅客の協力を得て、成田空港に無事着陸しました。

 

着陸後すぐに機内に乗り込んだ警察官が、その中国人のお客さまを取り押さえ、トラブルは解決しました。

 

どれほどの英語力が必要なのか

先日もお伝えしましたが、多言語対応には、まず「英語」です。

語学の達人になる必要はありませんから、外国人のお客さま対応を行う方は、基本的なコミュニケーションを英語で行えるようにしましょう。

 

言い換え力

先ほどの機内の例で、チーフパーサーが使用した英語は、シンプルな英語で、特徴は「言い換え」です。

 

たとえば、

「その行為は禁止されています」

  • Your behavior is prohibited by law. Not allowed. You can not do it here.

(あなたの行為は法律で禁止されています。してはいけません。)

※禁止された行為であることを、何通りかの言い方で伝えます。

(prohibited/not allowed/can not do)

※強調したい単語を更にゆっくり、低い声で言います。

(law/prohibited/not allowed/can not do)

 

しかるべき処置を取ります」

  • If you continue this, I need to move to the next step. That is XXX. I wish I don’t do this, but I can not decide it. It’s up to you.

(あなたがその行為を続けるなら、私たちは次の手を打たなければいけない。これは私の望むことではないけれど、あなたの行為次第です。あなたはどうするの?)

※相手の理解度を確認しながら、単語を簡単な言い方に、言い直します。

・If you continue this

→if you do not stop it

・I need to move to the next step

→I need to do XXX/I have to do XXX

・It’s up to you

→If you stop this, we don’t do this. But if you don’t stop this, we have to do XXX

 

実は、そのチーフパーサーの英語力は上級であり、TOEICも900点台という実力でした。

でも、敢えて、簡潔明瞭な英語を使ったのです。ゆっくりと、低い声で。

 

外国人のお客さまのトラブルに対応する際のマインド

中国人対応時だけではありませんが、お客さまの国籍に関わらず、トラブルやクレームには真摯な姿勢で向き合うことが重要です

 

クレーム解決できる・できないの差を生むもの

長年、トラブル対応の指導を続けて来て、確信を持って言えることがあります。

トラブルやクレームを解決できる・できない、クレームをプラスに変えられる・変えられない、それは間違いなく対応者のマインド・心によって決まっているということです。

 

その対応者の言葉ではなく、心の中の思いが、対応や態度に現れることで、

  • 心から誠実に対応している対応者はトラブルを比較的スムーズに解決し、
  • そうでない対応者は何故かトラブルがどんどん大きくなります。

 

日本人の差別意識

誤解を恐れず、敢えてお伝えしますが、日本人の中には、中国人や他のアジアのお客さまを下に見る人が、まだ多いです。

恐らく理由は、「日本の方が凄いのだ」という横柄な思い込みです。

 

日本のルールを無視する外国人に対して、私たちは、「ルールを守らないなんて非常識だ」「国民性を疑う」と思いがちです。

でも、そうではありません。

 

日本を訪れている外国人は、異文化で育っている人たちなのです。

非常識なのではありません。違うだけなのです。

 

優劣ではなく違うだけ 異文化受容

日本人は世界的に見ても、異文化不慣れ民族です。

それには理由があり、良い悪いではありません。日本人の特徴です。

このことを自覚して異文化交流をすることが大切です。

日本人の異文化理解度

「ゴミを道に捨てる」は常識?非常識?

日本で、道端にゴミを捨てることは「非常識!」です。

ゴミはゴミ箱に捨てなければ、町が汚くなり、皆が不快な思いをしますし、そのゴミを誰かが片付けなければいけません。

これはいけませんね。非常識です。

 

しかしある国では、ゴミは道端に捨てます。

だって、どうせゴミ箱もないし、ゴミを捨てれば清掃員の仕事が産まれる。

良いことではありませんか!

ゴミを捨てずに持ち帰る!?非常識です。

 

良い悪いではありません。違うのです。

 

でも、ここは日本です。

それならば、日本のルールを知らない人に、教えてあげれば良いのです。

怒ることではありません。非常識だ!なんて言わなくても良いのです。

 

日本だって同じでした。

昔、東京五輪以前の日本は、ゴミを道端に捨てていたそうです。

世界の国々は、同じペースで同じように成長する国ばかりではありません。

刺激を受け合い日本は成長できました。

全ての国があって、今の日本の成長があるのです。

 

外国人への苦手意識が根強い

上司や会社の考え方や想いが、知らず知らずのうちに、その会社の現場スタッフの潜在意識に残り、スタッフの価値感や行動を形成する基になっていることは、紛れもない、認めざるを得ない事実です。

 

「外国人への苦手意識」明暗を分ける先輩(会社)の風土

たとえば、

■ある物販店にて、混み合っているレジの順番を待たず、並んでいる他のお客さまを追い越してレジに来た中国人客がいた場合

異なる先輩の価値観をご紹介します。

※(  )の中は、口には出さない先輩の心の中の思いです。

  • 先輩A

「(もう、まただ…)お並び頂けますか?恐れ入りますが、順番を守ってください。」

  • 先輩B

「(そうですよね、順番を追い越すわよね…)お並び頂けますか?恐れ入りますが、順番を守ってください。」

 

先輩Aの( )の気持ちの背景としては、いつも〇〇人は順番を守らない、本当にマナーが悪い!いやになるわ!という想いがあるのでしょう。

 

一方、先輩Bの( )の気持ちの背景としては、

  • こんなに行列になっていては、待ちたくないと思って当然よね…(私たちは改善できる点を見逃しているのではないか?)
  • このお客様の国の文化では、整列して順番を待つことはないものね…。日本に来たからって、いきなり染みついた習慣を変えろと言われても戸惑うわよね…。
  • 急いでいる理由が、何かあるのかもしれないわ、飛行機に間に合わないのかしら、何かあるのかしら?

 

Aの考え方が横行している風土で育つ後輩スタッフは、「外国人=迷惑をかける人々」と思い込んでしまうでしょう。

Bの考え方が浸透している会社は、異文化理解、多様性の受け入れが現場で実践できているので、この会社で働けば働くほど、人間的にも、外国人のお客さまに対応するプロとしても、後輩は育ちます。

 

異文化理解 理想通りにはいかない?!

異文化理解の話になると、「そんな綺麗ごとは分かっているけど、実際この立場になれば君も分かるよ。理想通りになんていかないものだよ。」と考える人は実際にいます。

 

以前、多国籍(10国籍以上)のスタッフに対して、なんとも強引なマネジメントをしている社長と話した際、その社長は、まさに、この台詞を言っていました。

理想通りに異文化理解なんて出来ないし、簡単に日本の(自分の)やり方を変えられない、変えたってうまくいきっこない。

 

異文化理解が出来ず、自分のやり方を多国籍スタッフや多国籍顧客に押し付ける人は、決まってこう言います。

「これが日本のやり方なんだから」と。

違います。

 

異文化無理解=単なる他者許容力不足

日本は今グローバル化にどんどん対応しています、環境も人材も。

日本はグローバル化についていけない国ではありません。

日本のやり方、イコール、他者を受け入れず我を通すこと、ではありません。

 

それは、日本のやり方ではなく、「あなた自身の」傲慢なやり方です。

日本で育ったせいにしてはいけません。

日本で育っても他者を柔軟に受け入れ、理解し、その中で相手と良質な接点を増やしていくことが出来る人は大勢います。

 

このような人は、いくら多国籍社員・顧客が大勢いる環境で働いていたとしても、まったくグローバル化に対応できていないと言わざるを得ません。

そして、このような人は、多国籍社員・顧客に対してだけではなく、日本人社員・顧客に対しても同様に、「自分の価値観を押し付けている」のです。

 

異文化理解=他者理解・許容ができない人、自分の物差しだけで物事を良い悪いで判断する人は、グローバル化に対応できないだけではなく、外国人どころか、周りの日本人からも敬遠されているはずです。

 

ポイント整理

  • 外国人のお客さまのトラブルを解決するには、簡潔、明瞭な英語を使い、言い換え力を駆使し、誠実な気持ちで向き合いましょう。
  • トラブル解決の明暗を分けるものは、スタッフの心の在り方です。
  • 相手の行動に違和感を覚えた時は、良い悪いで物事を判断するのではなく、異文化理解、他者理解がスムーズに行えるよう心を鍛えましょう。
  • 「理想通りにはいかないのよ」と言って投げだすのはやめましょう。
  • 異文化理解、他者理解のもとで良好なコミュニケーションを築けるようになれば、外国人だけではなく、同じ日本人からも慕われる存在になるでしょう。

 

スキル付与に偏らない「外国人顧客クレーム対応教育」を

クレームやトラブル対応に正解はありません。対応力を身に付けるしかありません。

クレームをプラスに変える対応を、実際に目で見て、感じて、自分の物にしていくしかありません。

是非、従業員の対応基礎力向上を大切に考え、クレームやトラブルを解決するスキルを身につけるだけではなく、クレームを生まない従業員体質と、顧客満足度が上がる組織体質構築に繋がる教育を施してください。

クレーム対応研修

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